アジア途上国で国際協力を学ぶ
沖縄県、人材育成目指し高校生39人派遣
沖縄県の「おきなわ国際協力人材育成事業」で高校生39人がモンゴル、カンボジア、ラオスの3カ国に、それぞれ13人が派遣された。今年で5回目となる同事業は、国際社会に必要な人材育成プログラムで、沖縄独自の取り組みとして注目を集めている。(那覇支局・豊田 剛)
「日本と世界つなぐ懸け橋に」と決意表明
「国際協力レポーター事業成果報告会」が8月27日、浦添市の国立劇場おきなわで行われた。同事業は、国際協力機構(JICA)沖縄センター、青年海外協力協会(JOCA)沖縄支部らが協力。青年海外協力隊などが行う国際協力活動の現場視察や現地の人との交流を行うもの。
アジア・太平洋地域における国際交流・協力拠点を目指す沖縄県は、「海外のさまざまな国との交流と協力が重要で、国際社会からの認知が必要」との認識から、国際人材教育に力を入れている。
その一環として、同事業では沖縄県内の高校生が日本政府による開発途上国への技術支援の現場や青年ボランティア活動現場を視察。同時に、ホームステイや現地の学校見学などを通じて現地の若者と交流を行った。「国際協力の必要性、大切さを学び、グローバルな視点を持った若者を育成すること」が狙いだ。
研修期間は、事前学習、10日間程度の現地派遣、事後学習および発表会を含め、約3カ月間に及ぶ。県の文化観光スポーツ部交流推進課が事業主体となり、沖縄県振興特別推進交付金(ソフト交付金)を充当している。事業関係者は、「これだけの規模と期間、海外研修ができているのは沖縄県以外にはないのではないか」と話す。
報告会では、モンゴル、カンボジア、ラオスの各グループが、自作のスライドを使って解説したり、寸劇を披露しながら成果発表をした。
モンゴルに派遣されたグループは、首都ウランバートルの中高一貫校の学生たちと交流したほか、ボランティア団体による障害児療育支援活動やJICAの障害者の社会参加促進プロジェクトなどを視察した。派遣された生徒は「障害者を一人の人間として認める社会づくりの力になりたい」と決意表明。「親日国でありながら、あまりにもモンゴルのことを知らな過ぎるので、今後は両国の橋渡し役になりたい」と抱負を述べた。
カンボジアを訪れた生徒らは、1970年代後半のポル・ポト政権下における大虐殺を学ぶために、首都プノンペンの国立トゥールスレン虐殺博物館、虐殺現場のキリングフィールドを見学。先の大戦で地上戦を経験している沖縄とは別の「負の遺産」に触れることで、平和のありがたさを実感した。また、日本の国際医療ボランティア団体、ジャパンハートの医療支援の様子やカンボジア地雷対策センターなどを見学した。
ラオスに派遣されたチームは、非政府組織(NGO)が行う調理や縫製などの職業訓練活動などを視察した。報告会では、生徒らは貧困問題をクローズアップ。お金稼ぎの目的で不発弾を集めている子供が爆発事故に巻き込まれる様子やマーケットで物乞いする子供の姿を寸劇で紹介した。
各チームの発表後には、一人ひとりが、看護、農業分野、教育、外交など、自身の関心や特技を生かして国際貢献する決意を語った。報告会の最後に、生徒を代表してカンボジアに派遣された八重山高3年の新城結唯さんが「現地で学んだことを学校などで発信し、将来は日本と世界をつなぐ懸け橋になりたい」と力強く語った。
JICA沖縄国際センターの河崎充良所長は「発展途上国から学ぶことで、沖縄の良いところを確認できたのはうれしかった。これからの若者は大丈夫だと感じた」と感想を語った。県の職員は、「3カ月前は照れ屋だった生徒らが、堂々と現地視察について報告し決意表明する姿を見ると、生徒は一回り成長したと実感する」と目を細めた。