「薬物の真実」を伝え、友人を救おう
日本薬物対策協会が国連「撲滅デー」にイベント
国連の「国際薬物乱用撲滅デー」の6月26日、薬物の危険性を伝えるイベントが東京・新宿で行われた。主催したのは、教育現場を中心に啓発活動を続ける日本薬物対策協会。ボランティア講師が中高生にも及ぶ乱用の実態や、薬物の危険性を繰り返し伝えることの重要性を訴えた。また、お笑いコンビが駆け付け、この日のために作った“薬物ネタ”を初めて披露し、啓発活動に一役買った。(森田清策)
中学生にまで及ぶ“魔の手”、お笑いコンビが“薬物ネタ”で啓発
同協会は2007年から活動を開始。08年から、教育現場を中心に本格的な講演活動を続ける。イベントで最初に講演した樋田麻由美さんは、神奈川県葉山町で美容室を経営しながら、9年前からボランティアで活動に加わっている経験豊富な講師の一人。
これまでに延べ1万人以上の子供に薬物の危険性を伝えてきた樋田さんが強調したのは、薬物の“魔の手”が子供たちの身近に迫っている現実だ。
ある学校で講演を終えた後、樋田さんは女子生徒に声を掛けられた。「今、付き合っている彼氏から『一緒に薬物やろう』と言われるけど、どうしたらいい?」
「1回摂(と)っただけでも、死んでしまうこともある」と、拒絶することを伝えると、「でも、好きなんだよね」と迷っている様子。そこで、「薬物を一緒にやろうなんて、あなたのことを愛してないからだ」と、樋田さんは助言したという。
また、ある中学校では、2年生の男子生徒から「どうしても先生と話したい」と、別室に呼ばれた。「家に危険ドラッグがあるけど、どうしたらいい?」と相談されたという。
「中学生がこんな状態だ」と語る樋田さんは「同じ中学に2回講演に行くことがあるが、生徒は1回目の講演内容をほとんど覚えていない。だから、繰り返し、繰り返し、薬物の真実を伝えることが大切。そして、子供たちには『その真実を知って友達や周囲の人に伝えることで、いろんな人を助けることができる』と伝えてほしい」と訴えた。
この後、同協会のメイン講師の小倉謙さんが「薬物の本当の話」と題して講話。薬物には、覚醒剤、コカインなどの興奮剤、ヘロイン、大麻などの抑制剤、LSD、シンナーなどの幻覚剤があることを説明。最近は、規制が厳しくなった危険ドラッグに代わり、「頭が良くなる」などの触れ込みでインターネット上で販売されている「スマートドラッグ」(スマドラ)の乱用が増えている、と警告した。
さらに、薬物の定義を満たす条件として、①身体に有害②知覚力・思考力・記憶力に異変を生じさせる③依存を生じさせる――を挙げた。そして「たばこは体に有害で、ニコチン依存もあるが、ほとんど心に影響を与えないので、薬物ではない」としながら、体への害は分かりやすいので警戒しやすいが、「(見えにくい)心に異変を生じさせることが最も恐ろしい」と、分かりやすく解説した。
その上で、中高生の8%、小学生でも7%が薬物乱用は「個人の自由」と回答した同協会の調査結果を紹介。「私たちはこの意識を変えたい。本人が乱用しないのは当たり前だが、子供たちには『(薬物の真実を知って)周囲の家族や友人も守ろうよ』と伝えている」と強調した。
この後、お笑いコンビ「世界事情」が駆け付け、“薬物ネタ”を初披露した。2人は振り込め詐欺の手口などを紹介する「防犯漫才」を続け、神奈川県警から2年前に「防犯応援大使」に任命されている。
薬物ネタは、このイベントのために1カ月かけて作ったもので、売人からの誘惑を拒否する場面や、「失明する」「歯がボロボロになる」など薬物の危険性を、笑わせながら伝える内容となっている。最後は「芸人ですから、大爆笑の中で死にたい。“くすり”くらいで死にたくない」と、オチが決まって、会場は大爆笑。
ネタを披露した後、ボケ担当の桶谷篤さんは「お笑い芸人は、舞台で受けると幸せになれるので、薬物をやる必要がない。幸せなことを探すことが、(乱用の)抑止になるのでは」と語った。同協会世話役の馬崎奈央さんは「可能なら、世界事情さんとコラボで活動していきたい」と、活動の幅を広げることに意欲的だった。







