小中高連携でキャリア教育推進、北海道教委の肝煎り事業
地域に密着しながら職業体験、地方創生へ子供たちに自信
人口減と過疎化で苦しむ地方の自治体。今や地方創生は地域の生き残りを賭けた不可欠のテーマになっている。そうした中で地元郷土への愛着を身に付け、さらに職業体験などキャリア教育にもつながると期待されているのが現在、北海道教育員会が進めている「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」。このほど、同事業への課題と今年度の目標についての話し合いが持たれた。(湯朝 肇)
「社会に開かれた教育が必須」
「この事業を3年だけの限定とせず、継続して行ってほしい」-5月31日、札幌市内で開かれた「平成29年度第一回小中高一貫キャリア教育推進会議」で、委員の一人である青田基・北海道PTA連合会副会長はこう語って、ふるさとキャリア教育推進事業に期待を寄せた。
現在、北海道教育委員会(以下、道教委)が進めている「小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業」とは、小学校、中学校、高等学校が体系的連携を持ち、地域に密着しながら職業体験などを行うことでキャリア教育を進めるというもの。「平成27年度から3年間の計画で、地域の未来を担う人材を育成するため、地方自治体や地域の産業界など関係機関・団体の支援を受け、ふるさと・郷土の自然、産業を学び、地元への愛着を養うと同時に、地域における未来の人材を育成することを目的にしている」(学校教育局高校教育課産業教育指導グループ)という。
この会議の構成委員は、道や教育関係者ばかりでなく、北海道経済連合会や北海道経済産業局(経済産業省の出先機関)、北海道労働局(厚生労働省の出先機関)などからの参加といった省庁横断的な議論の場となっている。
委員長の亀野淳・北海道大学高等教育推進機構准教授は、「この事業は、いわば学校教育を通じた地域活性化の取り組みで、学校同士が連携し、地域の資源を題材としながら、地域全体で子供たちの成長を切れ目なく見守っていこうとするもの。そういう意味でとても有意義なプロジェクト。今日はその課題と今年度の計画を語っていただきたい」とあいさつした。
最初に委員会事務局から三つの地域の道南・檜山管内および道東・根室管内と釧路管内の小・中学校・高校が取り組んでいる事例を紹介。そのうちの一つ、釧路管内にある弟子屈小学校、弟子屈中学校、弟子屈高校の事例はビデオを使って説明した。弟子屈町は摩周湖や硫黄山、屈斜路湖など北海道でも有数の観光地。子供たちは自ら観光地を訪れたり、地元の観光協会から話を聞くなどして調べ、それらを基に全員英語でそれぞれの名所や特産品を紹介している。
道教委では、同事業に対して全道で50校の研究指定校を決めて取り組んできたが、今回事務局は、これまでの2年間の同事業の成果についても報告した。それによると、小学生では、「年上の人と関わるのが苦手だったけどこの行事に参加して、中学生や高校生と話したりすることが楽しかった」といった点や、中学生では「自分の住んでいる地域の生活や行事、主な仕事などについていろいろな話を聞くことができ、興味や関心が湧いた」、高校生では「地域の人たちと触れ合うことで、積極的にあいさつなどコミュニケーションを取ることができた」「自分が生まれ育った地域で社会人として働くことに興味が湧いた」などの意見や感想が出ており、おおむね良好な成果が上がっていると判断している。
その一方で委員からは、同事業に対して賛意を示しながらも、「成果が上がっている点は分かるが、むしろ大切なのは成果が出ていない面に着目する必要がある」「現在、地域に就職したものの、離職率が高い傾向にある。小・中学校・高校の学生の時に地域になじみ、地域の産業を少しでも理解しておけば、離職率は下がるだろう。そういう意味では、学校の物差しだけではなく、地域や関係団体を巻き込んだ取り組みと評価基準の設定も必要だ」といった声が出る。
折しも今年2月、文部科学省は「社会に開かれた教育課程を重視する」ことを基本とした学習指導要領の改訂案を公表した。それを踏まえて、北海道教育庁の北村善春・学校教育局長は、「ふるさとキャリア教育の成果を上げるには、まさに『社会に開かれた教育』が必須で、なおかつ社会との連携が不可欠」と強調する。今年10月31日にはこの事業の集大成として『北海道キャリア教育サミット』を開催に意欲を燃やしている。






