1人1台タブレット端末に教育的効果は十分確認
千葉大学教育学部附属中学校のICT授業研究会
千葉大学教育学部附属中学校(丸山研一校長、生徒数454人)は、「1人1台タブレット端末の教育的効果と運用上の課題」を主題にしたICT授業研究会をこのほど行った。学校全体で1人1台端末を所有している学校は千葉県内でも他に例がなく、画期的な取り組み。3年間のICT授業研究の結果、授業以外に生徒会活動や部活動など広く使われており、生徒や保護者、教員の反応・感想などはおおむね良好だった。(太田和宏)
生徒や父兄、教育に好評/費用やフィルタリングが課題
数学、学級活動、理科、社会、英語、国語、保健体育の授業でタブレット端末(タッチパネルやペンで入力ができるコンピューター。軽量で持ち運びが便利)がどのように授業の中で活用されているか、公開授業が行われた。
今の中学生は生まれた時からパソコンやネット環境がある世代で、タブレットを扱うのには慣れている生徒が大部分。教科書とノートでの学習に加え、視覚的な情報収集、クラス全体での考え方の共有などがスムーズに行われるようになった。情報活用能力の育成や分かりやすい授業ができるようになった。
特に、視覚も含めて考えるような数学の図形問題、理科の物質の状態変化、社会や国語の調べ物、二つの事柄を比較する、などには大いに力を発揮するようにみられた。プリントの配布、家庭での宿題・学習など的確に素早く伝えることができる。クラス全員の前で発言するのは苦手だが、文章や図形にしたものをメールで伝えるのなら、平気という生徒もいるようだ。
公開授業の後、全体会で三宅健次副校長による3年間のICT授業研究の成果発表が行われた。
平成25年度に文部科学省が発表した教育振興基本計画の中で「コンピューター室に40台、設置場所を限定しないコンピューター40台、高速インターネット接続および無線LAN整備率100%」などが数値目標で示されている。しかし、これでは1クラス分しかなく、授業が行われている教室以外の場所や家庭で使える環境ではない。ICTの効果的な活用に結び付けるならば、1人1台タブレット端末を所有させることが不可欠となる。
インフラ整備の初期投資に高額な費用が掛かるが、数年使えるもので、年間費用に分割すれば抑制は可能。維持管理費だけであれば、運用次第で教育的効果が期待できる。タブレット端末に関しては保護者に5万円の購入費と落下等で破損したり、誤ってソフトを消してしまった場合の修理費など負担が重なったものの、保護者への費用対効果のアンケートでは、おおむね好評価だった。
タブレットの不具合への対応、使い方の指導は主に学級担任が窓口になっている。教員側への労力対効果アンケートでは、不具合が生じた場合、学級担任をはじめ、情報教育担当、支援員の労力が大きく、教育的効果よりも、労力の方が上回っているという回答だった。生徒たちにタブレットが精密機械であるという認識が甘く、カバンの中に入れていて、落としてしまったり、荷物を詰め込み過ぎ、画面の変形や破損につながるケースもあったという。
また、ネットへの接続で、学校の休憩時間に、学習とは関係なく、趣味で映像を見たり、ゲームをするケースもあり、フィルタリング(一定の条件に基づいてデータなどを選別・排除する仕組み)をどのように設定するか、授業でどのように使わせるか、生徒指導の面で学級担任、情報教育担当の労力、運用上の課題も多く出てきた。
ICTを利活用する中で、生徒たちの思考過程や学習結果の可視化、教室で大勢の考えを瞬時に共有できるようになる利点を指摘。生徒の学習意欲や思考力の向上、協働の促進などにつながっているとした。
三宅副校長は「分かりやすい授業の実現、授業における教育的効果は十分確認できた。端末使用を授業内に抑えれば運用上の課題も軽減できる。私物のタブレットを持ち込むことも考えられるが、現状では難しい。今回の研究会では教員や学校関係者を集めて、実際の授業を見ていただきながら効果と課題について考えていただいた。よりよいICT教育の運用の方法、発展を追求していきたい」と今後の抱負を語った。







