石川・白山市がゲーム感覚で楽しく生活改善
「早寝、早起き、朝ごはん」狂わせるモンスターをやっつけろ!
「早寝、早起き、朝ごはん」全国協議会が、平成18年4月に設立されたのを契機に、現在、子供たちの生活改善を目指して、全国各地でさまざまな取り組みが行われている。石川県白山市で実践されている「生活リズム向上プロジェクト」もその一つ。毎日、規則的な生活を続けていくとポイントが増え、生活リズムを乱すモンスターたちをやっつける。子供たちはゲーム感覚で楽しみながら取り組み、それを見守る保護者の意識も変わりつつある。(日下一彦)
生活リズム向上目指す、小学校1・2年生に攻略本を配布
「ヨフカシー」「ネボラー」「タベネーゼ」、子供たちの基本的な生活リズムを乱す3匹のモンスターたちだ。順に就寝を妨げる、起床を妨げる、朝食を妨げる得意技がある。誰にでもある怠け心のようなものだ。これにボスモンスター「バッド・リズムン」がくっついている。しかし、これらのモンスターは4週間の間、毎日、規則正しい生活を実践していけば、見事に攻略できる仕組みになっている。
これは白山市教育委員会生涯学習課が、平成20年度から、市内の小学校19校の1、2年生全員に配布している冊子「生活リズムモンスター攻略ブック」だ。同市では、小学生の早い段階で生活リズムを改善し、日中の生活の場となる学校生活につなげようと、毎年、夏休み明けに学校を通じて配り、11月に回収している。子供たちは期間中、各自が毎日の状況を冊子に記録していくと、生活習慣を見つめ直し、生活リズムの向上につながるように工夫されている。
例えば、朝寝坊の得意なネボラーの攻略法をみてみよう。ネボラーは200ポイントの体力がある。これを倒すには、規則正しい生活を続けることでポイントを獲得し、その体力の数を超えると、“モンスター撃退”となる。「6時までにおきる」と30ポイント、「6時30分まで」だと20ポイント、「7時まで」なら10ポイントという具合だ。
従って、6時起きを一週間続けると210ポイント獲得し、ネボラーのポイントを上回り、やっつけたことになる。
他のモンスターの撃退も同様で、ヨフカシーは「9時までにねる」と30ポイント、「9時30分まで」なら20ポイント、「10時」なら10ポイント。また、タベネーゼだと「朝ごはんを4品以上食べる」と30ポイント、「3品」なら20ポイント、「1品、2品」だと10ポイントと決まっている。
ちなみに食べ物は3色に分類され、赤色グループは筋肉や骨、歯を作る「サカナ、納豆、ミルク、ヨーグルト、ハムエッグ」など、黄色は熱や力の素になる「ご飯、おにぎり、サンドイッチ、うどん」、緑色は体の調子を整える野菜や海藻、果物などだ。積極的に取り組めば最短で1週間、通常2週間で3匹のモンスターを撃退できる。
順調に3匹をやっつけると、いよいよボスモンスター「バッド・リズムン」が現れ、最終対決となる。こいつはかなり手ごわい。改善された生活を2週間続けることが求められるからだ。記入欄は1日目、2日目、3日目…………と2週間分あり、前述の通り、それぞれ指示された項目ができると〇を付けていく。一つ10ポイントだ。記入欄が〇で埋まると、ついに攻略となる。こうして4週間にわたり、「早寝、早起き、朝ごはん」の実践記録を毎日記録して生活習慣を見つめ直していく。
「モンスターを倒す過程で、子供たちに日々の生活リズムを整える必要に気付かせ、毎日の就寝、起床、朝食摂取を意識させながら、同時に楽しみながら具体的な目標を持って習慣付けができるように促しています」と同生涯学習課では説明している。
子供たちの感想をみると、「いつも7時ごろにおきてたけど、さいきんでは6時や6時30分におきれるようになりました。朝よゆうをもってごはんをたべてじゅんびすることができるようになってよかったです」「朝ごはんのみどりのなかまがあんまりとれなかった。みどりのなかまをたべるようにします」「ねるのは9時30分がほとんどだったけど、やって(取り組んで)9時にねられるようになったからうれしかった」など、楽しみながら取り組んだ様子が伝わってくる。「起床時刻、就寝時刻の遅い子、朝食をあまり食べない子ほど、取り組み後に生活習慣が改善されているとの結果が出た」(同課)という。
一方、保護者の反応をみると、「朝ごはんの品数を今まで意識していなかったけど、気にしながら食べるようになった。寝る時間を意識しながら準備するようになり、短期間で成長が見られた」「朝ごはんは3品が目立っていたので、4品以上を心掛けるようにしたいです。私自身も生活を見直すことができたように思います」
「好き嫌いが多くて困っていたが、前よりも積極的にバランスの良い食事を取りたいと、やる気いっぱいだった。苦手な野菜をたっぷり入れたスープを作ってほしいと言うので、作ったら喜んで食べていました」「朝ごはんの品数が少ないと、子供から注意されて大変でした」との声もあり、保護者にとっても刺激的な期間だったことが分かる。







