金沢商業高生徒の観光ガイドが修学旅行生に好評
「同世代」に親近、手作りのイラストや写真を準備
兼六園や金沢城公園などをボランティアで案内
北陸新幹線の開通で、修学旅行に金沢を訪れる首都圏の学校が増えている。そんな中、児童や生徒たちに好評なのが、地元高校生による観光ガイドだ。金沢商業高校(石川県金沢市)の観光研究部の生徒たちが、国特別名勝の兼六園や金沢城公園などをボランティアで案内している。手作りのイラストや写真を準備し、同世代の生徒たちの目線でとらえたガイドなので、修学旅行生には親近感が湧くようだ。(日下一彦、写真も)
地元を再認識、人材育成の場に
金沢市観光政策課によれば、今年度はこれまでに4097人の児童・生徒が金沢にやってきた。昨年度の2336人を大きく上回っている。学校数も昨年の17校から26校に伸び、過去最多となった。内訳をみると小学校2校、中学校12校、高校9校、特別支援学校などが3校となっている。金沢は加賀百万石の伝統文化が息づく半面、金沢21世紀美術館やおしゃれなギャラリーなどが整い、若い世代に新しい感性を発信しているのが魅力のようだ。
こうした状況を受けて、市では来年度の誘致をさらに広げようと、「金沢修学旅行ハンドブック」(24㌻)を5000部作製し、都内の学校や修学旅行を担当している旅行代理店などに配布した。同ブックには金沢の歴史や風土、伝統工芸や伝統芸能をはじめ、交通情報やバス情報がコンパクトに分かりやすく網羅されている。
その上で兼六園周辺エリア、長町武家屋敷跡エリア、ひがし・主計(かずえ)町茶屋街エリアなど主要な五つの区域と、その中にある観光地を地図に記し、自主研修などの散策にはうってつけの内容に編集している。金沢市内は主要な観光名所が2㌔圏内に集中しており、「班活動で歩きながら武家文化などが体験できる」(同政策課)のが、最大の特徴となっている。
また同ハンドブックでは、「金沢の武家文化を学ぶコース」「金沢の用水から歴史をひもとくコース」「金沢の建築物から歴史を学ぶコース」など、2時間30分から3時間30分で散策できる六つのモデルコースも紹介されていて、課外学習にはピッタリだ。
その一方で、修学旅行で金沢を訪れた児童・生徒に親しまれているのが、金沢商業高校の観光研究部の生徒たちによるボランティアの観光ガイドだ。同校観光サービスコースの体験学習の一環として、6年前に始まり、兼六園や金沢城、ひがしの茶屋街などを案内する。同校によれば、ガイドの受け入れ校は2年前が4校、昨年は10校だったが、今年は12校に増えている。
兼六園では、生徒たちは2~4人の班に分かれて、それぞれが修学旅行生6~7人を担当する。園内の名所では手製のイラストや写真付きの図を示しながら、一時間ほどかけて案内する。兼六園の名前の由来となった「六勝」の意味や日本最古とされる噴水、霞ヶ池に映るシンボルの徽軫灯籠(ことじとうろう)など、園内の見どころを次々と解説していく。
霞ヶ池の中央に浮かぶ蓬莱(ほうらい)島を指しながら、島の形が亀の甲羅に見えることや、島の対岸にあり、雪吊(つ)りで有名な唐崎松を鶴に見立てて、鶴と亀で兼六園を守っていることなどを、方言を交えながら話していくと、修学旅行生たちは興味深そうに耳を傾け、時には笑いも起こる。
事前の学習では、市観光ボランティアガイド「まいどさん」に説明の仕方を指導してもらったり、兼六園でガイド研修を受けて本番に備えてきた。生徒たちも、各自が知恵を絞りながらガイド内容を練り上げている。
こうした努力の結果、修学旅行生の反応はおおむね好評で、「年齢が近いので親近感が沸き、いろいろ話しやすかった」「絵や図を使って説明してもらい、とても分かりやすかった」などの感想が聞かれた。馬替日向子部長は、「中学生にはできるだけ難しい言葉を使わず、絵や図で分かりやすく説明するように心掛けています」とガイドの秘訣(ひけつ)を話している。生徒たちにはコミュニケーション力を鍛える場でもあり、金沢の魅力を再認識するきっかけにもなっている。
同部顧問の竹川晃代教諭は「通常の授業だけでなく、休日や放課後の部活動として観光ガイドに取り組んでいます。生徒たちにはガイドすることで金沢を更に好きになり、地元に貢献できる人材に育ってほしい」と話し、期待を込めている。