電通の女性過労死に想う


 10月7日、昨年クリスマスに自殺した電通の女性社員の過労死認定がされた。亡くなった高橋まつりさん(24歳)は母子家庭で育ち、母親を楽にしてあげたいと東大入学を果たし、卒業後電通に入社、わずか1年足らずで命を絶った。ツイッターには2時間睡眠や土日出勤が続き、「本気で死んでしまいたい」という書き込みがあり、上司によるパワハラの実態も伺えた。

 今月、公表された「過労死等防止対策白書」によると、1年間で「過労死」の労災認定の目安となる「80時間以上」を超えた月がある企業は2割超。ITなど情報通信業は4割強に達している。一部上場の某IT企業で働く知人は、繁忙期は夜10時から会議が当たり前、深夜1時過ぎまでほぼ全員が居残るのが常態化しているという。

 1999年の男女雇用機会均等法と労働基準法の改正により、女性の「時間外労働の制限」「深夜業の禁止」等の労働時間の規制が撤廃された。男女区別なく働けるようになったが、女性も10時以降の深夜労働や徹夜で仕事、休日出勤も男性同様に経験している。

 志をもって入社した優秀な女性が、妊娠・出産で辞めるのも、こうした日本の古い労働慣行が災いしている。男女の区別をしない労働環境は、妊娠前の女性の心身の健康への影響が少なくない。女性が厳しい労働環境に置かれていることが、結果的に日本社会の活力を失わせていることに、企業社会は気づいていない。

 労働時間革命を唱えるワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏は、長時間労働の是正によって企業業績を劇的に回復させている。それだけでなく氏は長時間労働を止めれば、出生率も回復すると明言している。

 まつりさんの母親は会見で「命より大切な仕事はありません」と語った。その大切な命を生む女性をもっと大切に、女性が輝く社会へのメッセージと受け止めたい。(光)