富山・石川・福井の北陸3県が共同で修学旅行を誘致
北陸新幹線の開業を契機にアピール
昨春の北陸新幹線開業を契機に、首都圏の学校に修学旅行で北陸に来てもらおうと、誘致活動が進んでいる。富山、石川、福井の北陸3県は、これまで誘致を個々に進めてきたが、JR西日本などと連携し、共同でプロジェクトを立ち上げ、このほど首都圏の旅行会社の教育旅行担当者を招いて、現地視察を行った。北陸地方への関心が高まっている時期だけに、その成果が期待されている。(日下一彦)
旅行会社を通して首都圏の学校に
ガイドに高校生ボランティアも
「昨年度の修学旅行生の宿泊者数は、3652人と前年度の3・5倍に増えている」。これは、石川県観光戦略推進部誘客戦略課がまとめた数字で、同県では北陸新幹線開業前の平成25年度から首都圏の学校を直接訪問し修学旅行の誘致に取り組んできた。首都圏の学校の修学旅行先は、これまで京都や奈良が圧倒的に多かったが同新幹線の開通で時短効果が生まれ、北陸地方を訪問しやすくなった。
そこで北陸3県は、これまで独自に行っていた誘致活動を一体化させ、共同で行うことで北陸全体の魅力を発信して誘致につなげようと、今年6月、「北陸3県修学旅行誘致推進プロジェクト」を発足させた。構成メンバーは3県と各観光連盟、それにJR西日本金沢支社、北陸経済連合会だ。
その第1弾として、先月26日、首都圏の旅行会社15社の担当者を招いて、都内のホテルで「修学旅行フェア」を開いた。各県の観光課の職員らが大型スクリーンを使ってプレゼンテーションし、教育効果の高い自然や伝統文化などを生かした各種モデルコースを提案した。
例えば、富山県が進めている自然教育の例として、富山湾に面した氷見市での漁業文化体験を提案している。クルーズ船で同湾に出て、海越しに雄大な立山連峰を眺望しながら、定置網漁を見学。名産の細工かまぼこの絵付けなど、複数の体験プランを数時間で実施できる点をアピールした。
また、福井県のものづくり体験では、全国1位のめがね産地の鯖江市で「自分だけのオリジナル眼鏡を作ろう」とPR、1500年の歴史がある越前和紙の里・越前市での紙すき体験や和紙で卒業証書を作るメニュー、美術工芸品の若狭めのうを使ったペンダント作りなど、七つの伝統工芸品の歴史を学びながら、それらに触れるプログラムを示した。
8月3~5日に開かれた現地視察会では、首都圏の旅行会社6社の担当者17人が参加。初日は北陸新幹線で富山県に入り、江戸初期の禅宗寺院建築の国宝・瑞龍寺(高岡市)をはじめ、越中五箇山の世界遺産・相倉合掌造り集落(南砺市)、社会科の教科書で紹介されている独特の農村風景の散居村について学ぶミュージアム(砺波市)などを視察した。
翌日は石川県に入り、輪島塗や九谷焼など伝統工芸の作品群が随所にディスプレイされているJR金沢駅を皮切りに、観光名所の兼六園と金沢城公園、“市民の台所”として知られている近江町市場、金沢独自の金箔貼りなどを体験した。
中でも国特別名勝の兼六園では、高校生ボランティアが一行を案内した。金沢商業高校ツーリズムコースの女子生徒3人で、同校では6年前から兼六園の案内役を務めている。修学旅行生にとっては同世代だけに親近感がわくと好評だ。一方、金沢市内は兼六園や金沢城公園、人気の高い金沢21世紀美術館などの観光名所が2㌔圏内に集中しており、「班活動で散策しながら武家文化などが体験できる」と担当者たちは感想を述べていた。
最終日の福井県では、高さ約25㍍の荒々しい岩壁が続く東尋坊、戦国時代の城下町が200㍍にわたって復元されている一乗谷朝倉氏遺跡を巡り、曹洞宗大本山の永平寺で座禅を体験した。さらに恐竜の化石発掘を体験できる県立恐竜博物館など、学習効果の高い各県の名所などを見て回った。
修学旅行は2~3泊して複数の県を訪問することが一般的だが、県を越えたコースの一例として、金沢市内を班別で自主研修し、相倉合掌造りを見学するコースなどが提案されている。また、近年、体験を重視する傾向が強くなっており、農業や漁業体験、前述の伝統工芸品作りなども貴重な学習機会となっている。地元では、生徒らが“リピーター”として、将来再び訪れることも期待している。






