余震や大雨が続き幼い子供たちにもストレス
熊本地震から100日超/狭い仮設住宅、遊び場なし
熊本地方を襲った大地震から100日が過ぎた。地震に追い打ちを掛けるように大雨が九州を襲った。遊び盛りの子供を持つ親は狭い仮設住宅で近所への気遣いなどストレスを感じている。それにも増して、子供たちは存分な遊び場がなく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性が増えている。「遊び場」の確保とともに、心のケアに気配りする地域社会の「見守り」も必要になっている。
PTSD防止に地域社会の見守り不可欠
熊本県甲佐町の白旗仮設団地。会社員下原武司さん(48)の一家は、震災から2カ月半が過ぎた6月27日に入居した。同町にある木造2階建て4LDKの自宅は基礎部分や外壁が大きく破損、「半壊」と判定された。仮設は約40平方㍍の3K。それでも仮設で最も広いタイプだ。妻つぐみさん(36)、つぐみさんの母菊枝さん(63)と5歳~6カ月の3人の子供を合わせた6人で生活する。
6畳間を居間、エアコンがある4畳半の部屋を菊枝さんの部屋とし、別の4畳半を5人の寝室として使う。冷蔵庫やベビーベッドなど最小限の家具で室内はいっぱいだ。「避難所生活を続けている人がいる中ありがたい」としながらも、つぐみさんは「やっぱり狭い」と正直な気持ちを明かす。
地震後は半壊した自宅で生活を続けたが、「子供が夜、怖がって寝室に行くのを嫌がった」。仮設に入居すると、怖がることはなくなったという。
しかし仮設暮らしも2週間を過ぎると、子供のストレスが心配になってきた。室内を駆け回り、つぐみさんとおしゃべりするが、長女つかさちゃん(5)は好きだったボール遊びができず、「狭い」と言って不満を募らせている様子だ。長男孝叶ちゃん(1)は自宅近くを通ると泣きだすことがあるという。
団地に入居する被災者が増えるにつれ、車の出入りも多くなり、室外も危険が多い。近くに子供が遊べる公園もない。つぐみさんは「仮設は子供を育てるのに適した環境とは言えない。早く自宅を建て直したいが、公費解体がいつできるかも分からない」と不安を口にする。
子供たちの心のケアで心配されるのがPTSD。厚生労働省によると、PTSDとは、命の危険を感じたり、自分ではどうしようもない圧倒的な強い力に支配されたりといった、強い恐怖感を伴う経験をした人に起きやすい症状。その怖かった経験の記憶がこころの傷(トラウマ)として残り、過敏になったり、ぐっすり眠れないなどさまざまな症状を引き起こしてしまう。
東日本大震災から1年半後に文部科学省が被災3県の保護者から聞き取り調査を行った。揺れの強度や津波の有無で地域に濃淡はあるものの、PTSDが疑われる子供が岩手で11・3%、宮城で19%、福島で22・9%に上った。
大きな地震や豪雨による崖崩れ、などにより心に負った傷が、不安となって、「物音に過剰に敏感」になったり「イライラする」、災害時を思い出し「突然泣き叫ぶ」といった行動となり何度も繰り返し表れる。親や学校の先生が気付かなかった心の傷が数年、あるいは、数十年たって急に表れるケースも少なくない。
命に関する恐怖だけでなく、心の問題も含めた苦痛、怒り、悲しみ、無力感など、さまざまな感情が交錯して症状となって表れる。対応能力がない子供は逆に親や周囲の目線を気にしたり、抑圧された環境で自分の中に閉じこもり、黙ったまま、無表情になってしまうケースもある。
親や学校の先生が症状に気付けばよいのだが、家の再建や生活をどう取り戻すか、目の前の課題に追われ、子供たちに手を差し伸べる余裕がない場合が多い。親や先生だけでなく、近所のおじさん、おばさん、避難所のスタッフなど、症状に気付いてあげ、打ち解けて話すことが大事だ。また、症状の重い場合はカウンセラーに相談したり、専門医の診察も必要になってくる。
熊本地震の2日後から国際的な子供支援団体のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは益城町の避難所に「こども広場」を設置、同年代の子供たちが一緒に遊ぶスペースが少ないながらできている。子供たちのストレス解消は、思う存分体を動かし、はしゃげるスペースの確保、日常の生活を取り戻すことが不可欠。親、学校の先生だけでなく新たな地域コミュニティーによる子供たちの見守りが必要になってくる。