保育士の魅力発信しよう、渋谷で「おしごと応援フェスタ」

 保育士の離職率の高さや待機児童など、保育の現場で「保育士不足」が深刻化する中、東京都は今月14日、東京・渋谷のヒカリエホールで、保育の仕事の魅力を発信するイベント「保育のお仕事応援フェスタ2016」を開催した。保育所などでの就労希望者に、事業者との就職相談会のほか、「イクメン芸能人」として知られるつるの剛士さんや、Twitterフォロワー35万人の保育士として話題の「てぃ先生」らがトークショーやパネルディスカッションを行い、子供の成長における保育士の役割の重要性、夫婦円満の大切さを訴えた。(社会部・宗村興一)

「親は感謝の気持ち忘れずに」 つるの剛士さん

「保護者との二人三脚が必要」 保育士てぃ先生

保育士の魅力発信しよう

トークセッションで保育士という仕事の素晴らしさを語るタレントのつるの剛士さん(中央)=14日、東京・渋谷

 一男三女の父親として育児や家事を積極的に行っているつるのさんはトークセッションに登場。東京都が保育所などへの入所待ちの待機児童が多いこともあって、まず「今日集まってくれた保育を勉強する学生さんたちは希望ですね」と語りかけた。

 そして、子供を預かる保育士の責任は重大だが、子供の成長に関わる仕事であり「魅力的な仕事」とした上で、「社会に保育の現状を伝えて、素晴らしい仕事だと多くの人に知ってもらいたい」と訴えた。

 一方、保護者に対しては、子供の世話を保育士に丸投げするのではなく、まず家庭でしっかり愛情を注ぎ、やって良いこと悪いことなどを教えるべきだ、家庭でのしつけの大切さを説いた。そして、「保育士さんに預かってもらってるという感謝の気持ちを持って、まず家庭で出来ることをしっかりやる。保育士さんたちが少しでも働きやすい環境にするべきだ」と指摘した。

 トークショーの後、報道陣からは“イクメン国会議員”の女性問題が報道されていたこともあって、「不倫」や「二股」についてのコメントを求められた。それに対して、つるのさんは「結婚式で神様に永遠の愛を誓っているわけだから、そこは理性のある人間として一線を越えるべきではない」と苦言を呈した。

 また、夫婦円満の秘訣はお互い感謝し合い、それを行動で示すべきだと強調。現在、夫人が第五子を妊娠中で「6年ぶりの子育ては楽しみ。家庭は本当にいいですね」と語った。

 パネルディスカッションで登壇したてぃ先生は、他の現役保育士と仕事の魅力やテクニックなどを紹介。子供は好奇心が強いことから、いろいろなことに挑戦させることが大切だとした。その時に「一緒に考えてみようか」「やってみようか」と探求心を後押しすると、子供は積極的になり、勉強好きに育つと語った。

 保護者との関係では、仕事で疲れた状態で子供を迎えに来た保護者には、ねぎらいの言葉を掛けたり、体調を気遣ったりすると心を開いてくれるとして、良好な関係を築くための心配りの大切さを説いた。そして、「子供にとって保育所が家庭の次に居心地のいい場所」にするため、保護者と保育士の二人三脚での子育てが大切だと述べた。

 最後に、保育を勉強する学生たちへのアドバイス。「お手玉や絵描きなど、何か子供を楽しませることができる技を学生時代に身につけてほしい。子供にとって、保育士は面白い存在であるべきです」「保育士に期待されることは多い。それに応えていって保育所の価値を高めていきましょう」と呼びかけた。

 会場にいた保育士志望の学生は「いろいろな話を聞いて勉強になった。保育士として頑張っていきたい」と感想を述べた。その一方で、「保育園で使うための絵を描いたり出し物の準備をしたりなど、家でも仕事をすることが多く、手取りも少ないので、保育士として働きたいけど家庭を考えたら辞めざるを得なかった」と、厳しい現実をもらす参加者もいた。

 東京都の保育状況についての説明では平成27年4月現在、都内の待機児童数は7814人と日本で一番多く、0~2歳児が全体の9割になる。その保護者の約5割がパートや求職中という。

 都は29年度末までに待機児童を解消し、その後も待機児童ゼロを実現するため、保育士就職相談会や職場定着支援などで多様な人材確保に努める。そうした施策の中には、大都市の多様なニーズに対応するため、0歳児保育や13時間開所など都独自の基準を満たした「東京都認証保育所」の設置や、保育士資格の取得のため指定保育士養成施設に在学する学生に就学資金を貸し付ける「保育士修学資金貸付事業」などがある。