自分を振り絞った子供たちの力作1704点

金沢ふるさと偉人館で恒例の自画像展、今年で14回目

 金沢市の金沢ふるさと偉人館で、恒例の「自画像展-自分を見つめ、自分を描く-」が開かれている。幼児から中学生の子供たちが、三面鏡などに映る自分を見詰めて、懸命に描いた作品展だ。画材は水彩絵の具やクレヨン、鉛筆、版画、さらにパソコンを使って描いたものなど、自身の特徴を捉えた顔、顔、顔が、1階フロアの壁や特設パネルにズラリと並んでいる。今回で14回を数える。(日下和彦)


成長が一目瞭然、「一生懸命」表現できたかが審査基準

自分を振り絞った子供たちの力作1704点

「審査員大賞」の展示を見る家族連れ(日下和彦撮影)

 今回の応募数は1704点で、昨年より150点余り増えた。市内の幼稚園や保育園、小学校、中学校から寄せられた。これだけ個性豊かな顔が並ぶと実に壮観だ。全国的にも極めてユニークな作品展となっている。

 展示は時計回りに年少、年中、年長組の順で、小学校低学年から高学年と続き、そして中学生の作品で構成されている。順に見ていくと、それぞれの年齢で線や色の使い方に特徴が表れている。また笑ったり泣いたり怒ったりの喜怒哀楽の表現の仕方も異なり、子供たちの成長過程が一目瞭然で、とても興味深い。日常生活では自分の顔をじっくりと眺めて、それを描くことはほとんどない。それだけに、自分自身を見詰めるきっかけにもなっているようだ。

 年少児ではたどたどしい線で顔の輪郭を描くだけだったり、目や鼻を書くので精いっぱいだが、一生懸命に取り組んだ様子が見えてほほ笑ましい。年中、年長組になると、顔の特徴や髪形などを上手に捉えて、観察力が深まっている。例えば年中組では、顔の表情がより詳細に描かれ、髪形も三つ編みや束ねた髪がはっきり描かれている。体の部位の特徴もよく表現され、耳の大きい児童はそれを巧みに描き、成長が感じられる。

 小学校の中・高学年になると、大笑いしたり、汗だくの表情を描いたり、大粒の涙を流している様子など、作風がますます多彩になっている。それらを一点一点じっくりと見ていくと、おとなしい性格が連想されたり、明朗活発な姿や、ちゃめっ気たっぷりの気性などもうかがえ、これが自画像展の良さでもあるようだ。

 中学生の作品では、美術部の生徒の作品が主なようで、水彩や鉛筆でしっかりしたタッチで描かれ、鑑賞する人を魅了する。鉛筆画では顔や襟元の陰影が巧みに描かれ、立体感が表現されている。展示作品には右下に赤いシールが貼られ、入賞作547点が選ばれている。担当者によると、各学年、各年齢で2~3割程度選ばれており、年少、年中、年長は多めに、小中学生は抑えめとのことだ。審査の尺度は「上手下手ではなく、一生懸命、自分を絞り出す作業がどこまで表現されているかを見させてもらいました」(ある審査員)とのこと。

子や孫の作品に目細める保護者、1月23日まで展示中

自分を振り絞った子供たちの力作1704点

金沢ふるさと偉人館の島津健一館長から表彰状と記念品を受け取る受賞者(日下和彦撮影)

 審査には金沢美術工芸大学の山崎剛学長、金沢21世紀美術館の長谷川祐子館長、金沢市の野口弘教育長ら5人の審査員が当たり、各審査員が「これは!」と、心引かれた作品を2点ずつ選び、計10作品が「審査員大賞」として特別展示されている。

 受賞者には来館時に島津健一館長より表彰状と記念品が手渡され、園児らはうれしそうに受け取っていた。鑑賞に訪れた保護者や祖父母らはわが子や孫の作品に目を細め、盛んにカメラに収めていた。年中組の母親は「園の先生のお話では、鏡を見てニコニコしながら描いていたそうです。お絵描きが大好きなので、とても良い思い出になります」と、ほほ笑んでいた。

 応募した2歳児全員に特別賞として「じょうずにかけた賞」が贈られた。同展は1月23日(日)まで。休館日は年末年始(12月29日~1月3日)と月曜。入場無料。問い合わせ=電話076(220)2474。