子供たちに安心できる居場所の設置が不可欠
全国的に増加する不登校生徒、その傾向は北海道でも同じだ。こうした不登校に陥った児童生徒に対して学校や地域はどのように支援すべきかをテーマとするセミナーがこのほど札幌市内で開かれた。民間団体の北海道人格教育協議会が主催。不登校生徒を支援するスクールカウンセラーを招き、教育現場の様子を聞きながら意見交流の場を持った。(札幌支局・湯朝 肇)
北海道札幌市、民間団体が「不登校」支援セミナー
「岩見沢市では不登校生徒を支援するため、平成27年度に教育支援センターが設置されました。私自身、スクールカウンセラーとして不登校の児童生徒や保護者と関わる中で、児童一人ひとりに寄り添った教育がとても大切だと感じています」――こう語るのは、北海道岩見沢市でスクールカウンセラーとして活動している亀山比佐さん。11月7日、札幌市内で開かれた北海道人格教育協議会(会長、山谷敬三郎・北翔大学学長)主催の教育セミナーで亀山さんは「不登校生徒の支援について多面的に考える」をテーマに活動の一端を紹介した。
岩見沢市内には現在、教育支援センターとして小中学校の学外施設として教育支援室(ルーム)が2カ所設置されている。一つは北海道教育大学岩見沢校内にある緑が丘ルーム、もう一つが同市青少年センター内にある有明ルームである。同市教育委員会によれば、令和2年11月時点で不登校児童は小学生が24人、中学生が63人。そのうち、教育支援室を活用している児童は小学生7人、中学生で21人となっている。二つの教育支援室については「生徒が行きやすい場所を選択できるようにしている」(亀山さん)という。子供たちにとって安心できる居場所の設置は不可欠だ。
このほかに「緑が丘ルームの近くに光陵中学校があり、同校のサポートルームと連携を取りながら、そちらも利用できるようになっている」(同)という。同センターにはスクールカウンセラーの他に特別支援教育専門員、医療アドバイザー(小児科医)が配置されている。
具体的なスケジュールとしては、例えば緑が丘ルームの場合、月曜日から金曜日まで、午前10時から午後2時まで、数人で学習できる共同スペース、独りで学ぶ個別学習のスペースが設けられ、そこでの学習とともに、スポーツや料理実習、菜園づくりなどの体験学習も行う。
もっとも、こうした教育支援センターが道内全ての自治体に設置されているわけではない。現在、道内179市町村のうち、設置されているのは55の自治体でおよそ3分の1といったところ。その要因としては、①予算・場所の確保が難しい②スクールカウンセラーなど人材の確保が困難――などの点が挙げられる。
家庭問題で無気力になる子供たち、支援センターの充実を
一方で、北海道内での不登校児童の増加は続く。道教委の調査によれば、令和2年度の小学校の不登校児童数は2696人で5年前(平成28年度、1031人)に比べ2・5倍の増加。中学校においても令和2年度は6177人で5年前(3946人)と比べて1・5倍以上に増加している。
不登校が増加している原因として亀山さんは、「統計では、学校内ではいじめを除く友人関係をめぐる問題、転入学での不適応、学業への不安や無気力などありますが、カウンセラーとして生徒とじかに接しながら感じることは家庭内で起きる問題が原因で無気力になって不登校になるというケースが目立ちます」と説明する。家庭環境が子供たちに大きな影響を及ぼしているというのである。
不登校生徒の支援策としては、①不登校生徒は別室登校となるが、そこでは常時大人がいることが大切②学校、教育支援センター、スクールカウンセラー、保護者との緊密な連携が必要③体験学習などを通しての協同作業で社会性を培うこと。自然の空気に触れることで気持ちを発散させ、感性や気持ちの面でよい循環をつくることが大切――といった点を強調。「何よりも学校に行けない子供たちが安心していられる空間をつくることが大切。特に、畑や菜園での収穫作業などを通して仲間同士の交流の中からつかみ取るものがある」と亀山さんは語る。
セミナーの参加者からは、「不登校の原因として一番いじめが多いのかと思ったが、それ以外の要因が多かったのは意外だった」「不登校児童を持つ保護者は独りで悩むのではなく、まず相談することが大事。そのためには支援センターなどのような施設の充実が今後も欠かせないと思う」といった意見が出た。