全国の高校生が「出汁」をテーマに悪戦苦闘

 和食文化が盛んな金沢市で、8月10日、全国の高校生が和食料理の腕前を競う「全日本高校生WASHOKUグランプリ2021」の決勝大会が開かれた。会場の「金沢未来のまち創造館」の調理室には、各チームが1時間かけて、考案した料理を手作りし、審査員に振る舞った。グランプリには沖縄県浦添市の市立浦添工業高校のチームが輝いた。(日下一彦)


和食料理の腕前を競う決勝大会、石川・金沢市で開催

全国の高校生が「出汁」をテーマに悪戦苦闘

「全日本高校生WASHOKUグランプリ2021」に優勝した浦添工高の古謝一歌さん(中央右)と上運天里華さん(中央左)(金沢市提供)

 大会は金沢市が主催し、今年で2回目。「出汁(だし)を使った和食」をテーマに、全国から29校110チームがエントリーし、書類審査を通過した6チームが決勝に進んだ。出場校(チーム名)は東京都立農業高校(東京タラレバ娘)、長野県の屋代南高校(トマトメイト)、三重県立相可(おうか)高校(ムラトリック、伊勢のピリカルの2チーム)、京都府の福知山淑徳高校(BAMBOO)、沖縄県立浦添工高(ニライカナイ)で、チーム編成は同じ高校に所属する生徒同士、2人1組となっている。

 会場の同創造館は廃校した中学校の校舎をリニューアルし、今大会が、こけら落としのイベント。最新の調理器具や食器が導入され、真新しい調理台の前で、各チームは練り上げた料理に腕を振るった。

 出汁がテーマだけに、生徒たちは昆布やかつお節、干しシイタケなどから出汁を取り、それぞれの地元食材を使って調理した。審査員には、作りたてで温かいうちに試食してもらおうと、各チームは7分ごとに順に調理に取り掛かった。それが終わると、順にプレゼンテーションに臨み、審査員の質問に応えた。

 審査のポイントは創造性と独自性、色彩、盛り付けの美しさ、栄養のバランス、手際の良さ、出汁のクオリティー、さらに五感の満足度もチェックされる。生徒たちは鮮やかな手さばきで素材を調理し、全チームが時間内に考案した和食3食分を用意した。調理補助委員として、地元の高校生も手伝った。

 審査委員は金沢の料亭「日本料理銭屋」主人の高木慎一朗さんを委員長に5人が担当。トリ出汁はどのようにして取ったかとの質問に、地鶏のガラを煮込んで余分な脂を落として使った(トマトメイト)など、緊張しながらも丁寧に応えていた。

グランプリは沖縄・浦添工高、琉球王朝時代の料理に工夫

全国の高校生が「出汁」をテーマに悪戦苦闘

「全日本高校生WASHOKUグランプリ2021」グランプリに輝いた「万国津梁(世界への架け橋)」(金沢市提供)

 グランプリになった浦添工高の「万国津梁(しんりょう)(世界への架け橋)」は、調理科3年の上運天(かみうんてん)里華さんと古謝(こじゃ)一歌さんが、琉球王朝時代の料理に工夫を加え、現代の沖縄産品の魚と紅芋の天ぷら、沖縄ブランド豚肉を使った煮込みなどを組み合わせた。スッポンも使っているが、自分たちで解体したことなどを説明した。

 同大会は2019年8月に開催され、長野県野沢南高校の「長寿の里信濃の鯉づくし御膳」が優勝。昨年はコロナ禍のため中止された。

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開 催 趣 旨

 金沢には藩政時代から培われ、市民の食習慣として生活に深く溶け込み、特有の発展を続けてきた食文化がある。和食がユネスコ無形文化遺産の登録や健康志向の高まりを機に、国内外から注目が高まる中、「高校生の熱き情熱で創造力を高め合う全日本高校生WASHOKUグランプリを開催し、次世代を担う料理人の発掘・育成」を、うたってっている。

◆全日本高校生WASHOKUグランプリの概要

 調理時間は60分(時間厳守)、審査用、展示用、撮影用の3食を作る。食材原価(調味料を含まない)は3000円以内(3食分)。チーム編成は同じ学校の生徒2人で、男子2人でも女子2人でもいい。プレゼンテーションのテーマは「未来へ伝える料理への思いと姿勢」。