「熱中小学校」開校、7歳の目線で学び直そう

 子供の目線で大人の学びを深める大人の社会塾、「熱中小学校」の20校目が10月、沖縄で開校する。沖縄では従来の地域活性化に加え、人材育成のコンセプトで運営。新しい試みとして注目される。(沖縄支局・豊田 剛)


山形県高畠町発の大人の社会塾、地域活性化をめざす

 「もう一度7歳の目で世界を」を合言葉に、世代を超えた学びの場を提供する熱中小学校。2015年10月に山形県高畠町で町の活性化を目指して始まった大人の学び場だ。

 熱中小学校は、全国の生徒総数は約1000人で、平均年齢は52・1歳。10代から80代まで幅広いのが特徴だ。16年には内閣府「地方創生加速化交付金」の対象事業となり、2020年には人口創出・拡大のための実証実験ケースとなっている。

 過疎化で廃校となった全国の小学校を舞台に地域活性化を目指し、海外の1校を除き全国の18校で開校している。山形県高畠町では、ぶどう栽培の品質管理、北海道旭川郊外の江丹別では何もないことを武器に、外から人を呼び込みながら、サウナやブルーチーズ作りといった特色を生かす取り組みを行っている。

熱中小学校の特徴
 ・地域に根差した多様性あるコミュニティー
 ・第一線で活躍するボランティア教師による深い学び
 ・全国ネットワーク
 ・地域人材の育成
 ・地域間の関係人口創出

10月に20校目が沖縄で開校、人材育成も取り入れ

「熱中小学校」開校、7歳の目線で学び直そう

「おきなわ熱中小学校」をPRする早川周作校長(右)と事務局の照屋幹夫氏(中央)ら=3日、沖縄県庁(豊田剛撮影)

 沖縄校は沖縄本島中部の米軍基地の門前町、沖縄市の商店街内に開校する。過疎地以外での開校は初めて。ただ、全国の例に漏れず、沖縄市の商店街はシャッター通りと化しており、地域活性化は大きな課題だ。おきなわ熱中小学校では、地域活性化に加え、人材育成を取り入れた新たな試みとなる。

 おきなわ熱中小学校の第1期は10月から来年3月まで、月2回講座を開く。IT企業の社長や大学教授、デザイナー、技術者、文化人などさまざまな講師陣が講義する。沖縄の歴史文化や芸術など、地域に根差した講義も盛り込む予定だ。校長には、卓球Tリーグの琉球アスティーダを運営する琉球アスティーダスポーツクラブの早川周作社長が就任する。

 3日、沖縄県庁で行われた記者会見で早川氏は「7歳の目線でさまざまな情報を仕入れ、人生を豊かにしようというのがテーマ。アジアの中心の沖縄で新しい刺激を受けてほしい」と呼び掛けた。

 名誉校長は沖縄県系2世のセイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使が担う。イシカワ氏は「力を合わせて沖縄を盛り上げていきたい。世界に例がないモデルを作りたい」と抱負を述べた。

 事務局を担うまちづくりNPOコザまち社中の照屋幹夫理事長は、「沖縄市コザ地区は米軍基地の門前町として国際性に富み、多文化が共生し、学び直しには良い環境がそろっている」と地の利を強調する。商店街には子供の居場所、さらに、若い起業家や移住者が多く集うスタートアップ拠点がある。これに加えて今回、大人が学べる環境が整う。世代を超えた三つの組織が融合して全国と世界に発信することをイメージしている。

 開校に先立ち8月22日からオープンスクールがある。対面、オンラインの両方が選べる。12月には、東京五輪メダリストの張本智和、丹羽孝希両選手らを招いたイベントを沖縄アリーナ(沖縄市)で計画しているという。

 早川氏は、「学生証となる『熱中パスポート』があれば他校の熱中小学校生徒でも沖縄に来て受講することができる」と、県外からの参加を呼び掛けた。県内から100人、県外から200人の参加を目指している。