マラバール 日米豪印は対中連携強化を


 インド国防省は、毎年行っている海上自衛隊、米海軍との合同海上演習「マラバール」について、今年は西太平洋で実施すると発表した。

 昨年に続きオーストラリアが参加する。豪州は近年、中国の台頭を懸念しており、ベンガル湾とアラビア海を演習海域とした昨年のマラバールに13年ぶりに加わった。日米豪印の連携枠組み「クアッド」内での協力を強化すべきだ。

 「真珠の首飾り」に対抗

 今年のマラバールが西太平洋で実施されるのは、中国が南シナ海からマラッカ海峡を経てインド洋、ペルシャ湾に至る海洋覇権奪取を狙う「真珠の首飾り戦略」などに対抗する狙いがあろう。インド太平洋地域で強まる中国の海洋進出に対する牽制(けんせい)効果が期待される。

 インドと中国は共に核保有国で、両国は国境をめぐる長い衝突の歴史がある。両国国境の係争地域で起きた昨年の衝突で、インド軍に21人の死者が出たことで、インド政府は国防政策の一環としてクアッドへの関与を強める決断をした。

 米インド太平洋軍のアキリーノ司令官は、クアッドの重要性に関して「共通の価値観を持つ国が基盤になっている」と指摘。公海航行の自由や法の統治、人権などを挙げて「日米豪印は深い信念を持っている」と強調した。「自由で開かれたインド太平洋」構想を共有する日米豪印は、今後も中国を念頭にさまざまな形で連携を強めていく必要がある。

 クアッド以外の民主主義国との協力強化も求められよう。マラバールには欧州各国の海軍が参加する可能性もある。今年4月にはベンガル湾で、海自と米国、豪州、インド、フランス海軍による共同訓練「ラ・ペルーズ」が行われた。

 また、7月に豪州沿岸で行われた2年に1度の米豪軍事演習「タリスマン・セーバー」は、陸海空に加えてサイバー空間で相互運用性を高めるため、オブザーバーも含めて全部で11カ国から約1万7000人が参加。日本からは自衛隊が派遣され、インドもオブザーバーで参加するなどクアッドの4カ国が結集した格好となったほか、英国やカナダ、韓国、ニュージーランドなども加わった。

 この間、演習を偵察する中国の情報収集艦が付近の海域に向けて航行し、にらみ合いが続いた。演習では紛争事態での共同対処行動など高度な訓練が実施され、成功裏に終了した。

 インド政府もインド太平洋地域の秩序の安定に向け、友好国との軍事協力を進める考えを示している。インド海軍は今回、8月上旬から約2カ月の間に、マラバールに加え、豪州、ベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシア各国の海軍とそれぞれ2国間の演習も行うとしている。

 抑止に全力を挙げよ

 共産党一党独裁体制を堅持する中国は、覇権主義的な動きを強め、特に最近は台湾統一への野心をあらわにしている。

 9月には米国で日米豪印首脳会談が行われる予定だ。4カ国はあらゆる機会を捉えて連携を誇示し、対中抑止に全力を挙げる必要がある。