五感をフルに使って「本物の自然」に触れる
青少年期における自然体験の重要性が指摘されて久しい。そうした中、空知管内にある栗山町を拠点に自然体験の場を提供しているNPO法人雨煙別(うえんべつ)学校が運営する雨煙別小学校コカ・コーラ環境ハウスがこのほど、道内で初めて環境教育等促進法に基づく「体験の機会の場」として北海道より認定された。その経緯を探ってみた。(札幌支局・湯朝 肇)
栗山町の雨煙別小学校コカ・コーラ環境ハウスで自然体験
「栗山町の豊かな自然環境の中、山や川で“本物の自然”に触れながら五感をフルに使って活動してほしい」――こう語るのは環境ハウス事務局長の高木政昭さん。同町は札幌から東に車で1時間ほどの所にある風光明媚(めいび)な田園都市だ。
その町の一角にある環境ハウスは、1998年に閉校した雨煙別小学校を栗山町と公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団の支援によって、環境を主体とした青少年育成と地域活性化の場として2008年に再生、10年にオープンした。
そもそも旧雨煙別小学校は1936年に2階建て校舎として建て替えられ、普通教室7、作法室、職員室、音楽室、運動器具室、石炭庫などを備え8学級386人の児童を抱えていた。当時道内屈指の近代的な木造校舎で、2012年3月31日で閉校となった増毛町にあった増毛小学校と共に北海道で現存する最も古い歴史的価値のある校舎と言われている。現在は同校舎を拠点に自然保護活動や自然・農業環境を生かした体験型の環境プログラムを展開。その数は80以上にも及び、ここを訪れる利用者は全国から年間6000人を優に超えている。
水辺の生き物の観察・採取、里山体験や川下りを楽しむ
具体的なプログラムとしては、①手作りの道具を使って、水辺の生き物を観察・採取し、水辺の生態などを調べる水辺体験②森に入って枝打ちや間伐体験などを通して里山の手入れや、畑の収穫作業を通して里山の暮らしを学ぶ里山体験③近くを流れる夕張川をゴムボートなどに乗って下る川下り体験など――四季折々の実体験を楽しむことができる。
これについて環境ハウススタッフの遠藤康行さんは「町内にハサンベツ里山地区という『自然と共生』をテーマとした自然体験型フィールドがあり、活動事業に関しては栗山町、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団と連携しながら行っています」と語る。近年は生息域が広がったホタルの観察会が人気だという。
環境教育等促進法に基づき道初の「体験の機会の場」に
こうした環境ハウスの活動に対して、今年3月、北海道は道内で初めて「体験の機会の場」に認定した。ちなみに、この認定制度は12年に施行された環境教育等促進法に基づくもので、土地や建物を持つ施設所有者が、自然体験活動など体験活動の場を提供する場合に、都道府県知事に申請して認定を受けることのできる制度。環境ハウスもこのたび、認定を受けた形になる。
認定については、①(活動への)参加者及び実施者の安全が確保されている②利益の分配その他の営利を主たる目的とするものでない③3年以上従事した経験を有する者、もしくはこれと同等以上の知識、技能を有する者がおり、その指導の下で適切に行われている――など8項目にわたる基準をクリアしなければならない。
これまで全国では24カ所の施設が認定され、今回で25番目の認定となる。これについて北海道環境生活部環境局の尾原裕昌主幹は「ハサンベツ川をフィールドにした自然体験活動を行うことにより、子供たちだけでなく親子、さらに道内外の人々を対象に生物多様性の保全や自然再生の大切さを学ぶ場を提供している」と評価する。今回、道から「体験の機会の場」の認定を受けた環境ハウスの高木事務局長は、「現在は新型コロナ禍ではありますが、里山づくりを進めながら体験プログラムをさらに充実していきたい」と話す。