沖縄への修学旅行が前年度比で6割も減少
沖縄県は全国的に人気がある修学旅行先だ。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB、下地芳郎会長)は昨年12月23日、2020年度に沖縄を訪れる修学旅行は、前年度比で約6割少ない856校、16万1206人との見通しを明らかにした。年末から年始にかけて、国の観光支援策「Go To トラベル」が一時停止になり、沖縄を訪れる修学旅行生がより一層少なくなる可能性が高くなった。(沖縄支局・豊田 剛)
下地OCVB会長「コロナ感染拡大による集団移動への不安が原因」
OCVBは、10月以降、すでに実施した分と、年度内に残っている予約数の合計を計算した。コロナ前の予約数は2318校、41万6050人だったが、学校数で1462校(63・1%)、人数では25万4844人(61・3%)に減少する。
調査は、全国一律で「Go To トラベル」が停止する前の12月8日時点のもの。実施予定が多いのは3月で、調査後に「Go To トラベル」が全国一律で停止したため、キャンセルがさらに拡大する見通し。11月10日に調査した時点では、924校が実施し、17万3216人になる見込みだったが、年末にかけてコロナウイルス感染が拡大したことが影響し、実施校はさらに減った。
下地会長は「沖縄だけというより、全国の主要な地域で感染が拡大しているため、集団での移動に対する不安があるのだろう」と分析した。
国内需要の回復に向け緊急誘客、玉城知事も修学旅行実施願いを発送
OCVBは、国内需要の回復に向けた緊急誘客対策として、「修学旅行対策」を重点施策に据えている。沖縄就航路線を持つ航空会社各社と連携したプロモーションの実施と並ぶ重点施策の柱の一つだ。
修学旅行を実施検討中の学校には、感染症予防・拡大防止対策への県の取り組みを強化していることを理解してもらいつつ、実施を依頼する。玉城デニー知事は11月20日、各都道府県知事と教育委員長宛てに「沖縄県への修学旅行の実施について」と題する文書を発送した。
この中で、今年度すでに修学旅行を実施した生徒や学校関係者らから「感染防止対策は大変だったが良い思い出になった」「受入施設の感染防止対策が徹底されていた」「中止も検討したが実施して良かった」などとの声が上がっていることを紹介。学校関係者や保護者が懸念している新型コロナウイルスに感染した際の緊急対応や受け入れ施設の感染症予防・拡大防止対策について「関係者一体となって全力で取り組んで」いると強調した。また、県は「沖縄修学旅行防疫観光動画」も作成・配信している。
コロナ感染が特定された修学旅行生に「緊急時支援奨励金」を支給
具体的には、新型コロナウイルス感染症患者との濃厚接触者と特定された修学旅行生に対しては、県内での健康観察の実施を奨励するため、該当する修学旅行生の宿泊費および交通費に対して「修学旅行緊急時支援事業奨励金」を支給することにしている。該当する生徒の保護者(親族、保護のために来県した人)も給付金の対象となる。
OCVBはまた、修学旅行をキャンセルした学校に、普段から沖縄を感じてもらえるようポスターを送付し、次年度の実施につなげてもらう。実施する学校には、知事名でお礼状を発送する。
「中止でなく延期を」、学校関係者や旅行社にオンライン説明会配信
学校関係者や旅行社向けには、1月下旬に「沖縄修学旅行オンラインフェア2021」を配信。小規模ながら対面式の修学旅行説明会も、1月中旬から2月にかけて東京、大阪、静岡、岡山の4カ所で開く予定だ。
下地会長は、「県内で修学旅行を受け入れる関係者は多岐にわたるので、影響が大きい。中止でなく延期し、実施の可能性を見いだしてほしい」と話した。
沖縄美ら海水族館に近い本部町のリゾートホテルの支配人は、「秋から冬にかけて宿泊客のほとんどが修学旅行生だが、予約キャンセルが相次ぎ、ホテルの客室稼働率は2割程度しかない」と嘆く。那覇市で修学旅行客目当ての店が軒を連ねる国際通りのある土産屋は「インバウンド客がなく、修学旅行や年末年始の観光客に期待していたのだが、客足は戻らないまま年を越すことになった」と厳しい現状を語る。







