石絵で広がる自然遊び「WA ROCK」の輪
秋田市立新屋図書館で石に絵を描くワークショップを行う
動物やキャラクター、文字や絵を小石に描いて公園などに置き、誰かに拾ってもらう「WA ROCK」(ワロック)という自然遊びが秋田県を中心に静かな広がりを見せている。この遊びを体験してもらおうと、このほど、秋田市立新屋(あらや)図書館で石に絵を描くワークショップが開かれ、家族連れなど18人が参加した。(伊藤志郎)
家族連れなど18人が参加、子供以上に夢中になる保護者も
参加者は同館が用意した300個近い小石にアクリル絵の具で絵や文字、色を塗っていく。石は楕円(だえん)形やハート形などさまざまで、色も黒白茶など多様。参加者は好きな石を選び、アクリル絵の具でゲームのキャラクターやカブトムシ、藤の花、熊、クリスマスツリー、赤や青色などに変身させていく。5個以上作る子供もいれば、子供以上に夢中になる保護者もいた。描く内容は全くの自由だ。
最後はラッカースプレーで表面を保護し、裏面には新屋の地名を入れた「WA ROCK ARAYA 2020」とFacebook(フェイスブック)の頭文字「f」を油性ペンで書いた後、全作品の記念写真を撮り、各自が家に持ち帰った。
小学生の2人の娘と参加した40歳代の母親は「家の玄関に絵を描いた石を置いていたら、隣の人が石を交換してほしいと言ってきて、この遊びを知った。道の駅でも交換したことがあります。これからも娘たちと楽しく続けたい」と話した。
かやのさんが西オーストラリアの自然遊びを北秋田市阿仁合へ伝える
秋田県で広がったきっかけは、西オーストラリア・パースの公立病院で看護師として働いていたチョールトン・かやのさんが、室内でゲームばかりで過ごす子供に外で遊んでほしいとの思いから紹介してくれた。現地では「WA ROCKS」が大流行しているという。
かやのさんは、両親が暮らす北秋田市阿仁合(あにあい)との間を往復する中で、娘が通う阿仁合小学校(全校児童約30人)に遊び方の説明文と多くの石を隠して2017年パースに戻った。そこで同小学校の保護者・児童を中心としてじわじわと広がってきた。
その後、阿仁合に家族ごと移り住んだかやのさんと映像制作の長谷川拓郎さん(42)や地域の有志が、「WA ROCK JAPAN」の名前でフェイスブックを通し県内外の人と交流を深めてきた。もともとの「WA」とは、西オーストラリアの頭文字を略したものだが、日本で始めるときにはWAを日本語の「輪(ワ)」としてワロックと呼んでいる。
この日、2人は参加者に「見つけた石は持ち帰って自分の家に飾ってもいいし、他の場所に隠してもいいですが、他の人の迷惑になる場所や重要文化財、彫刻作品の近くには置かないでください」と注意事項を伝え、描き方を手伝った。
「自分で大切にしたい石は、おじいちゃんやおばあちゃんの庭に隠し、草むしりの時に探してもらうとか、学校で外に隠し、お友達に探してもらう遊び方もあります」とかやのさん。長谷川さんは「石と絵の具があればできる、とても簡単な遊びですが、たくさんの人を笑顔にする力があります」と話す。
かやのさんは、キャラクターやロボット、人物画、「夢はでっかく」など文字シリーズをブログで紹介。また、石は飛行機の機内に持ち込めるため、海外との交流も行っている。
阿仁合は阿仁鉱山があった街。JRの角館駅と鷹巣駅間を南北に走る秋田内陸線の駅がある。長谷川さんが運営するコミュニティースペース「阿仁合コミューン」は駅前にある。電話0186(67)7030。