「プラチナ大賞」最高賞の大賞・総理大臣賞に選出
青森県、弘前市、弘前大が進める健康増進プロジェクト
弘前大学と青森県、弘前市が共同で進めている「産学官民一体型青森健康イノベーション創出プロジェクト」が11月、日本が目指すべき社会に向けた取り組みを表彰する「プラチナ大賞」最高賞の大賞・総理大臣賞に選ばれた。同事業は近年、全国の大学などと連携した研究や大手企業の大型投資、他の拠点間とのデータ連携も目立つなど、全国や海外から注目されるプロジェクトに成長している。(市原幸彦)
産学官民が多方面で連携、全国や海外から注目される
プラチナ大賞が描く「プラチナ社会」は、環境問題やエネルギーの心配がなく、雇用があり、あらゆる年代の人が生涯を通じて豊かに生き生きと健康で暮らせる社会。全国の首長や企業経営者などで構成する「プラチナ構想ネットワーク」などが主催している。
審査では、弘前大学COI(センター・オブ・イノベーション)研究推進機構が、2005年から弘前市岩木地区で続けてきた大規模健診「岩木健康増進プロジェクト」で延べ2万人分、2000項目に及ぶビッグデータを取得、それを基に、産学官民の多方面の連携でさまざまな疾患予防の研究や新産業の創出につながっていることが評価された。
同事業の中心となるのが27年に創設された青森県医師会附属「健やか力推進センター」(センター長=中路重之・同大大学院医学研究科特任教授)だ。地域や学校、職場で健康づくりのリーダーとなる健やか隊員や健康増進リーダーらの育成も進み、県内小中学校の健康授業、親子体操の普及員養成講座など、子供から大人まで巻き込んだ健康啓発を全県で展開している。
同事業の推進によって、全市町村で健康宣言が出された。同県だけの現象だ。その効果もあって、今年5月の保健協力員の全県研修会の参加者数は、5年前の2倍に達した。
また、学校での系統的・包括的な健康教育も、県下約100の小中学校で行われている。生徒は積極的に授業で健康知識を吸収し、帰宅後に家庭で健康に関する会話が増え、保護者を含めて食事や健康を見直す機会にもなったという感想も多く寄せられている。
一方、平成29年に、県は「健康経営認定制度」を創設。認定企業には県の入札ポイントが与えられる。これを機に、県下の職場の健康づくりが一挙に勢いづき、約200の認定企業が誕生した。県内3社の従業員約100名を対象に、カロリーや塩分を抑えたヘルシー弁当プログラムを実施したところ、3ヵ月後には内臓脂肪の低下や血圧の改善効果が見られたという。
同機構事務局によれば「こうした取り組みの結果、県ではこれまで短命県が当たり前のように受け止められてきましたが、男性の平均寿命の伸び幅(2010~15年)が全国3位となり、野菜摂取量も増えるなど目に見える成果が出ている。県民の意識も着実に変化してきた」という。
企業との連携としては、健診センター・医療機関連携システムの開発、予兆発見のアプリケーション開発、脳疾患における解析ツールの開発、健康度検査システム、健康改善製品の開発、運動の習慣化スキームの開発、個人の健康維持および疾患予防に最適な食事提供サービス、新たな健康指標及び健康手法の開発、高齢者の見守り・防犯システムの開発など、数十の事業が進んでいる。
海外にも活動の場を広げている。今月、台湾では経済界の主要メンバーも多数出席する中、「第9回産学官金ラウンドテーブルin台湾」で教員が講演。また、ベトナムでは、同大が開発した「啓発型検診」(新型検診)を実施。弘前大学COIの取り組みについて高い関心が寄せられた。
COI拠点長の中路重之氏は「今、〈いかに生きるか〉から〈いかに健やかに老いるか〉へのパラダイムシフトが起きつつある。同COIではいろんなデータを網羅的に採っている。どの分野とも組めるので、ハブ的な役割を果たしていきたい。関係者が一丸となってさらに努力していきたい」と意気込んでいる。







