農業生産工程管理の国際認証を取得し農業展開
「北海道ふるさと・みらい創生推進事業」、道教委の取り組み
人口減少が進む地方にとって、地域づくりのための人材養成は急務となっている。そうした中で北海道教育委員会は昨年度より「北海道ふるさと・みらい創生推進事業」に取り組んでいる。地域の課題を見つけ、解決のための方策を探しながら地域創生に取り組む高校生を支援する事業で、このほど全道の高校生が札幌に集まり、各校の取り組みを発表する「全道フォーラム」が開催された。(札幌支局・湯朝 肇)
全道の高校生が「全道フォーラム」で発表
「OPENプロジェクト」取り組みも紹介
「GAP(農業生産工程管理)の国際認証取得に向けて取り組むことで、農産物の安全性やリスク管理に対する意識が非常に変わりました」こう語るのは岩見沢農業高校3年の大塚悠生君。10月31日、札幌市内で開かれた北海道教育委員会(以下、道教委)主催の「北海道ふるさと・みらい創生推進事業『全道フォーラム』」で大塚君は、昨年11月に取得したグローバルGAPと呼ばれる国際水準の認証取得までの経緯や今後の展開などについて説明した。
取得のメリットについて「今後、農産物の輸出が増加する中で海外が認める安全基準をクリアし、自信を持って提供できるようになる。現在10品目の作物で認証を取得しており、この制度を多くの農家に広めていきたい」と大塚君は話す。
ちなみに、GAPとは農業において食品安全、環境保全、労働安全などの農業生産の持続可能性を確保するための生産工程管理のこと。現場においてGAPが正しく行われているかどうかを第三者機関によって審査され、認証を与えられる。GAPには一般財団法人日本GAP協会が認証するASIAGAP、ドイツの機関が認証するグローバルGAPがある。
ところで、道教委は現在、北海道の地域創生の源となる基幹産業の担い手や地域を守り支えていく人材の育成を促す方策として、昨年度から「北海道ふるさと・みらい創生推進事業」をスタートさせており、「国際水準GAP教育推進プロジェクト」は同事業の一つ。指定校として岩見沢農業高校の他に旭川農業高校、帯広農業高校がある。
同プロジェクトの狙いを赤間幸人・北海道教育庁学校教育局長は、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックでの食材調達を目指しています。また、認証取得に当たっては生徒たちが半年以上も準備を重ね、公開審査におけるすべての口頭試験にパスするなど農業生産工程管理に関する知識と技術が高まっていることも事実で今後のリーダーとして期待されています」と語る。
一方、この日のフォーラムでは同プロジェクトの発表の他に、もう一つの柱である「高等学校OPENプロジェクト」の取り組みも紹介された。このプロジェクトの参加校は15校。その趣旨は、「地域の課題を解決するための方策を高校生が企画・立案し、地域の企業や住民と協働して地域づくりに貢献していく」(赤間局長)というもの。
例えば、日高管内新ひだか町にある静内農業高校では、同町が日本有数の軽種馬産地であることから、軽種馬のサラブレッドをテーマにした街づくりを考案。生産科学科馬コースの生徒たちが馬研究班と馬利用班の二つに分かれて街の活性化に取り組んだ。
「日高は馬の産地といっても329戸の馬農家のうち6割が担い手不足を訴えています。また、半数以上の経営者が60代で後継者不足は深刻な問題」と課題を挙げ、こうした地域の課題を解決するため、まず強い馬の育成を掲げ、GPSなどを利用して馬の運動量を調べるなど科学的な手法を使って調査に乗り出した。また、馬の魅力を発信しようと管内の小中学校に出掛けて自ら出前講座を持つなど積極的にPRを展開。地元の馬生産者などから大きな期待を受けていることが報告された。
OPENプロジェクトでは、このほかに離島で地域の魅力を発信する利尻高校の取り組みや世界自然遺産の知床半島に所在する羅臼高校の取り組みなどが紹介された。その後、同フォーラムに参加した生徒同士の意見交流会が持たれた。
道教委は「地域創生に取り組む高校生を支援するため、大学や経済団体、地元地域などと連携して、ともに活力ある街づくりを進めていきたい」との姿勢を打ち出している。今後、高校生などの若い人材が地域の魅力をどう引き出すかが焦点となる。







