ボリビアの反米左派モラレス大統領辞任
国軍が反旗 不正疑惑に国民反発
南米ボリビアの反米左派モラレス大統領(60)が10日、選挙不正疑惑が高まる中で辞任を表明した。国軍の最高司令官や与党政治家もモラレス氏に反旗を翻しており、強権的な政治手法に国民が拒否の姿勢を突き付けた形となった。
先月20日に行われた大統領選で、内外のメディアは「決選投票入り」と報じたが、選管が突然、開票速報の公開を中止。翌日、モラレス氏の当選が発表された。4選を目指していたモラレス氏が勝利を宣言した。
対抗馬のメサ元大統領をはじめとする野党と支持者らが、開票作業に不正があったと批判、3週間に及ぶ抗議デモが全国各地で続く中で、3人の死者、数百人の負傷者を出す事態へと発展した。
ボリビアに選挙監視団を送り込んでいた米州機構(OAS)は10日、投開票作業に明らかな不正行為が認められたと発表、選管組織の刷新と大統領選挙のやり直しを求めた。
国内外からの批判が強まる中、モラレス氏は大統領選挙のやり直しを行うことを発表した。しかし、反発は強く、ついには国軍のカリマン最高司令官や警察トップが「国内の安定が保証できない」としてモラレス氏に辞任を求める声明を出した。
軍の後ろ盾を失ったモラレス氏は、全国向けのテレビ中継を通じて「大統領を辞任する」ことを発表、抗議デモの沈静化を要請した。
辞任を受けて首都ラパスでは、多くの市民がボリビア国旗を掲げて路上に繰り出し、「ボリビアは自由だ」などと喜びを表した。メサ氏は、ツイッターに「ボリビアの独裁は終わった」などと投稿した。
モラレス氏が亡命する可能性も指摘されており、すでにメキシコ政府が同氏の亡命を受け入れることを表明している。
モラレス大統領は、ベネズエラのマドゥロ大統領やキューバのカストロ議長と共に南米の反米左派を率いてきた。今回、モラレス氏が軍部の支持を失う中で退陣を強いられたことは、独裁的な政治を続けるベネズエラのマドゥロ政権にも影響を与えそうだ。ベネズエラやキューバは、モラレス氏の辞任を「クーデター」だと批判している。