総選挙にらむ文氏の反日扇動

高永喆氏

 

 北朝鮮は最近2週間の間に、弾道ミサイルを2発ずつ4回も発射した。北は米韓合同演習を行う文在寅政権に対し「殴られるような行為をするな」と警告するが、文政権は相次ぐミサイル発射に対して遺憾声明さえ出せない。

 文政権が北朝鮮に屈辱的である理由は、北の動向が韓国の大統領選挙の勝敗を決めるからだ。さらに、韓国の左派政権は北朝鮮に多くの弱点を握られていると言われる。弱点が暴露されたら韓国の左派政権は政治生命が終わるので、北朝鮮の言いなりになるしかない。

 文氏は就任後、脱原発政策を推進し、国内の原子力発電業界や海外での原発建設受注に莫大(ばくだい)な損害を与えている。さらに、サッカー競技場6000個分に相当する全国の森林を伐採して中国製太陽光パネルを設置したが、台風で土砂崩れが相次ぎ、重金属による土壌汚染が深刻となっている。

 文氏はまた、2017年9月、ニューヨークでの日米韓首脳会談で「米国は私たちの同盟国だが、日本は同盟国ではない」と発言。18年5月、東京での日韓首脳会談では、安倍晋三首相から韓国語で書いた就任1周年を祝うケーキをプレゼントされだが「歯が悪いので、甘いものは食べられない」といって一口も食べなかったという。

 安倍首相が「(元慰安婦への)反省とおわびの気持ちに揺るぎはない」としながら「最終的、不可逆的な解決」と強調した慰安婦合意を、文氏は事実上破棄。いわゆる強制徴用賠償判決に対しても、日韓請求権協定に基づく日本側の働き掛けに一切応じなかった。

 その一方で、日本が半導体素材輸出管理の強化に出ると、日本から輸入した(ウラン精製にも使われる)フッ化水素40トンの行方を明らかにしないまま、貿易戦争だといって反日感情を煽(あお)っている。自ら日韓関係を悪化させてきたことは棚上げし、関係悪化の全責任を日本側に転嫁しているのだ。

 文氏は南北経済協力を通して日本との経済戦争に勝利すると国民を扇動している。北朝鮮経済は国民総所得(GNI)で韓国の約50分の1に過ぎないので荒唐無稽な話だ。

 韓国国民は文政権の反日扇動が来年の総選挙を狙った計略だと見抜いている。相次ぐ失策にもかかわらず、文氏の支持率は40%を下らない。韓国の政界、法曹、メディアは主に従北主体思想派と労働組合が動かしているからだ。それでも8月15日には全国的な反文政権デモが予定されている。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授)