露政府 中国―欧州高速道路整備


私道2000㌔を支援

 ロシア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギスの旧ソ連5カ国が加盟する「ユーラシア経済連合」と中国が推進するシルクロード経済圏構想「一帯一路」の連携を中露両国が進める中で、ロシアでは欧州連合(EU)から中国への輸送路の区間となる高速道路整備が課題に上っている。

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 露政府内で幾つかの案が検討される中で、メドベージェフ首相が、非公開会社「ロシアホールディングスカンパニー」にカザフスタン国境からベラルーシ国境まで約2000キロの建設計画を承認したことを露紙「ベドモスチ」が先月7日に報じ、他の露メディアや欧米メディアが取り上げた。

 同紙によれば、「メリディアン(子午線)」高速道路と名付けられた同社の計画への認可は6月24日付の政府文書で確認された。約6000億ルーブル(約9780億円)と見積もられる総工費に国家予算は使わず、民間投資で建設するロシア初となる私道の4車線高速道路だが、中国を含む投資家から十分な資金を集めるため、運輸省、経済開発省、財務省など政府が全面的に必要な支援を行うことになる。

 ルートは都市部から遠く、モスクワの南400キロほどの地点を東西に伸びる建設用地の約80%を既に買収。現在、カザフスタンで建設中の高速道路と合わせて完成すれば、最短最速の欧州―中国間の貨物輸送路になる。巨大経済圏のEUと中国との物流のほとんどは船舶輸送だ。ロシアとしては、鉄道の他に自動車道でもその一部を国内に取り込むことで経済効果を期待している。

メドベージェフ首相

メドベージェフ首相(AFP時事)

 「子午線」高速道路計画を提案した同社を2008年に設立したアレクサンドル・リャザノフ氏は、かつてガス会社「ガスプロム」の筆頭副会長を務め、メドベージェフ氏は当時会長だった間柄で、盟友関係だ。

 同計画はEUと中国に物流ルートを提供し、高速料金による採算性を見込んでいる。中国は黄海沿岸の連雲港市から西部のカザフスタン国境に至る連霍高速道路を、カザフスタン―ロシアの高速道に連結することにより、サンクトペテルブルクの港、あるいはベラルーシ、ポーランドを抜けてドイツのハンブルクなど欧州の港まで通じる高速輸送の可能性が広がる。

 ただ、米国の中国への制裁関税や為替操作国認定、ロシアのクリミア併合への欧米による対露経済制裁など国際環境は厳しくなっている。EUも中国の世界貿易機関(WTO)加盟が認められた2001年以後10年余り続いた中国への熱いまなざしが、このところ冷めてきた。

 一方、欧米との対立で中露両国は接近している。今年も4月にプーチン大統領が北京で開催された「一帯一路」第2回フォーラムに出席、6月には習近平主席がサンクトペテルブルクで行われた「国際経済フォーラム」に出席するなど、経済関係を強化する構えだ。

 「子午線」高速道路は、その象徴的計画の一つと言える。露メディアは昨年3月、すでにカザフスタン国境近くで道路建設が始まっていると報じた。ただ、12~14年と見積もる高速料金による償還の実現性や、投資家に対する年間最低保証収入の条件、他のルートの計画案などをめぐって露政府内に議論がある。開通までなお紆余(うよ)曲折しそうだ。

(外報部)