悪しき体質露呈した沖縄メディア
沖縄在住フリーライター 新里 英紀
今回、参院選に関連して、沖縄メディア(主に新聞)の悪しき体質が衆目にさらされた。
自民党沖縄県連の会長と幹事長は選挙後の7月24日、記者会見を開き、地元紙の沖縄タイムスなどへの抗議を表明した。関係者によれば「あまりにひどい報道内容だったため、急遽(きゅうきょ)、記者会見を開いて抗議することになった」と言い、会見では「圧力ではなく、選挙報道の在り方について考えてほしい」と述べた。
タイムスは選挙直後の23日付1面トップの連載記事に「新基地曖昧 自民と溝 県連幹部 大失敗」の大見出しを立て、落選した自民公認候補(公明、維新推薦)の安里繁信氏に対する個人攻撃、中傷と取れる内容で固めた。
また、一方的な情報を垂れ流した悪意ある記事は、自民と安里氏サイドの分断、離反を意図したばかりか、安里氏の今後の政治生命すら脅かすものだった。同時に、安里氏に投じた有権者の意思を愚弄(ぐろう)しており、公平・公正を旨とする選挙報道の客観性を大きく逸脱していた。
記事の中身を要約すると、まず、情報の発信者は県連幹部、企業幹部など全て匿名になっている。そして「公認を取り消すべきだ」とか、安里氏の過去の言動などが述べられているが、単なる個人レベルの発言にすぎない。公式に行われた県議会の議員総会や候補者選考委員会の決定、見解ではない。安里氏の戦略・戦術、候補擁立にさかのぼって報道するのであれば、公式に決定した時点の組織の責任者に発言の是非を確認すべきである。
安里氏や自民県連にとって、重大問題を含んだ発言内容だけになおのこと、報道機関は確認作業が必要である。情報を吟味せず、ただ垂れ流しただけで、明らかに一方に偏った報道になっている。
一方の側に偏重した報道姿勢は過去にもある。2014年の沖縄県知事選挙の際、普天間飛行場の辺野古移設に反対する勢力と共同歩調を取る沖縄メディアは、一方的に保守系候補を非難・攻撃して、本来、公平・公正であるべき選挙報道を自ら放棄した。
自民県連会長、幹事長らによる抗議の会見は、特に選挙報道に対して、メディアの根本体質を問い直す契機になろう。
次の知事選挙や国政選挙を諦めよとか、参院1議席の犠牲は仕方ない、とする発言報道に至っては、1票を投じた有権者を極めて侮辱するものだ。
案の定、というべきか、タイムスは社説と識者を使って「情報開示を求めた会見は報道圧力。看過できない」と批判した。確かに情報源の秘匿は最高裁でも認められ、報道機関にとっては生命線だ。だからといって、責任ある取材源に確認取材をすることなく、匿名に頼って垂れ流し報道をする姿勢が許されるわけではない。著しく信憑(しんぴょう)性に欠ける。
公示前のがら空きの選挙事務所を狙って写真を撮り、わざわざ個人攻撃記事に添える取材手法にも、その意図と体質が表れている。