国境を守る沖縄の離島に新たな選挙区を
会社経営者 牛尾 弘行
1996年に日米両政府が沖縄の米軍基地の大規模返還に合意した特別行動委員会(SACO)の最終報告から25年がたった。この合意では嘉手納基地以南の米軍基地が約20%返還されることになっているが、それでも専有面積で日本全国の米軍基地の60%余りが沖縄に配備されたままである。
沖縄県は1609年の薩摩侵攻によって古琉球時代が終了したが、薩摩と尚家への二重課税(人頭税)、二重隷属によって貧しく辛い歴史の歩みを余儀なくされた。明治維新改革による廃藩置県で「沖縄県」として富国強兵策の中、すさまじい勢いで近代化する日本国の枠に入り、令和の今日を迎えている。
それまで、大東亜戦争での唯一の地上戦で一木一草残らない惨禍の体験、引き続き、27年間にわたる異民族・米軍の占領統治の歴史がある。晴れて祖国復帰はしたものの、米軍の過重負担もあり、反体制、反自民的な政治風土が強く醸成され、それウチナーンチュ・アイデンティティーにこだわり続けていることは理解できる。しかし、これでは豊かで平和な明日にはつながらないと危惧している。
そこで、政治家・論評家ではない、実業家としての観点・発想で次の提案を申し上げたい。
政治家は、基地と沖縄振興予算はリンクしていないと発言しているが、リンクしていることは誰が見ても明らかである。ただ、米軍基地も自衛隊基地も他国を侵略するためにあるのではないことも明らかである。
一方で、覇権主義で侵略のために基地を拡大しているのは中国である。米軍も自衛隊も覇権主義国家・中国から国土の防衛の役割を果たしていることは明白だ。「基地があるから振興予算を」という時代ではない。日本で最も広い国境線を守っている沖縄県であるが故に、防人振興予算に変えていくべきだ。
沖縄県は、多くの離島に不便を顧みず、住み続けている県民がいるからこそ、国境を守ることができている。現に、尖閣諸島には以前、日本人が住んでいたから中国は手を出さなかった。今は尖閣諸島から住民がいなくなり、近海に地下資源があることが分かると、急変し、尖閣諸島は中国の領土であると主張し始めた。
現在の沖縄県の人口は約145万人。四つの選挙区があるが、ここで、離島の苦しみを意味する「島ちゃび」を代表する選挙区の新設を提案したい。沖縄本島から橋1本で往来できる離島は別にして、先島諸島を中心にした純粋離島人口は約14万人。そこに選挙区を新設してもらいたい。新設する第5区以外の1~4区の平均人口で約32万人と妥当だ。
人間が生きていく上で最も良い環境にあるのが沖縄県だ。地震、津波、土石流などの自然災害、さらには、花粉症が全国で最も少ない。日本最南端の島嶼(とうしょ)県である沖縄県が全国で一番、自然人口の増加率が高い。
今後、人口増加と国境を守っているという大義を政治に反映するために、自民党沖縄県連を中心に、自民党本部や他府県出身議員などにロビー活動をしていくべきではないか。