米前政権の融和策で中国「増長」
南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島海域で、中国海軍の駆逐艦が米駆逐艦に異常接近するなど、海域での中国の活動が活発化している。米海軍元高官は、オバマ前政権時に厳しい対応を取らなかったことが中国の「増長」を招いたと指摘した。
太平洋艦隊によると、「航行の自由作戦」のためガベン(中国名・南薫)礁から12カイリ(約22キロ)以内を航行していた米海軍駆逐艦「ディケーター」に、中国海軍の旅洋型駆逐艦が約40メートルまで接近、ディケーターは回避操作を余儀なくされたという。異常接近の様子は、ディケーターを支援しているとみられる海軍の偵察機が撮影したが、写真からは40メートルではなく十数メートルにまで接近しているように見える。
米海軍高官は以前から、このような異常接近が「判断ミス」を招き、銃撃が大規模な地域紛争に発展する可能性があるとして警告してきた。
ジョナサン・グリナート前海軍作戦部長(退役大将)は最近、オバマ前政権が中国の人工島建設の阻止へ行動を取らなかったことが、中国の増長を招いたと指摘した。グリナート氏は「中国の指導者らが、米国からもっと強い反応があるものと考え、活動の調整が必要になる可能性も考慮していたことを示す証拠は確かにある」と指摘、「米国から反応がなかったことから、人工島建設は速やかに進められた」ことを明らかにした。
この指摘は、グリナート氏が作戦部長だった当時、海軍司令官だった呉勝利氏との会談での発言に基づいたもの。呉氏は会談で「米国は中国の人工島建設に対して、もっと強い反応を取るものと思っていた」と語ったという。一方、グリナート氏のもとで太平洋艦隊情報部長を務めたジム・ファネル海軍退役大佐は、中国が2012年に、フィリピンが領有を主張するスカボロー礁(中国名・黄岩島)を実効支配下に置いた時、厳しい対応を取るよう求めたが受け入れられなかったことを明らかにした。
ファネル氏は記者(ビル・ガーツ)に、「グリナート大将は、中国の拡張主義に対する前政権の融和策を支持していた」と指摘、「中国の海洋権益の拡大を知っていながら、警鐘を鳴らすことを怠った」と非難した。