国際常識無視の日報論議
防衛省は4月16日、イラク復興支援特別措置法に基づき派遣された陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報を公表した。
新聞各紙が日報の公開に関する社説を掲載したが、18日に掲載された朝日の社説に、私は違和感を覚えた。朝日は、小野寺五典防衛相が「イラク復興支援特別措置法に基づいて活動したという認識に変わりない」と述べていることに対し、「政府は『戦闘行為』を『国または国に準ずる者による組織的、計画的な攻撃』としており、日報にあるような状況は『戦闘』には当たらないというわけだが、納得できる説明ではない」と批判。さらに、「今回の日報公開を機に、政府から独立した機関を設け、陸自初の『戦地』派遣の全容、とりわけ『非戦闘地域』の実態を検証すべきだ」としている。
「戦地」の定義を、朝日はどのように捉えているのか。日本国内の治安状態と比較して、当時のイラクが「戦地」だと認定するのであれば、あまりにも国際社会の現実を無視した非常識な認識だ。
同じことは、国会で日報問題を追及している野党議員にも言えることだろう。安全保障の常識がない発言が多過ぎないか。枝野幸男立憲民主党代表に至っては、「自衛隊の幹部に、警察や海上保安庁から人を送り込まないといけない」とまで発言していた。現在も自衛隊、警察、海上保安庁の間で人事交流が行われている。だが、警察、海上保安庁から本格的に人を送り込むという話は、自衛隊の任務(業務)をまったく理解していない非常識な発言だ。
一方、日報に対する防衛省の対応にも問題があった。本来、日報は今後の研究材料として保存するのは当然だ。「日報は破棄された」という当初の説明はおかしい。マスコミや野党が追及するのも当然だろう。
産経は17日の紙面で「黒塗り判断忙殺業務まひ」という見出しを付けて、防衛省に対する情報公開請求が「年間約5000件にも上り、意図的に請求を繰り返し、自衛隊の機能をパンクさせる『情報公開請求テロ』の可能性がある」と紹介している。他紙にはない視点だと私は思う。
(濱口和久)





