「いずも」空母化の抑止効果

 防衛省は昨年12月、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を、戦闘機の発着が可能な護衛艦(空母化)に改修する検討に入った。

 「いずも」は平成27年3月に就役した海自最新鋭護衛艦で、全長248メートルの全通式甲板を備え、ヘリコプター14機が搭載可能だ。

 海自幹部によると、甲板の塗装を変えて耐熱性を上げるなどの小規模な改修で、戦闘機の発着は可能だという。昨年3月には、同型2番艦として「かが」も就役しており、同時に「かが」も改修すべきである。

 海自が「いずも」に搭載を検討しているのは、米海兵隊最新鋭ステルス戦闘機F35B。同機は、短距離の滑走で離陸し、垂直着陸できるため、短い滑走路での運用や艦載に適している戦闘機だ。

 航空自衛隊は、既にF35Aの導入を決めている。加えて、F35Bの導入も検討しており、将来的には空自のF35Bを「いずも」に搭載し、作戦運用する構想も浮上している。

 空自がF35Bを導入すれば、仮に空自の主要基地の滑走路が破壊された場合でも、艦上(洋上基地)を滑走路として使用できるようになり、作戦展開の幅が広がることになる。

 政府見解では、専守防衛の観点から、攻撃型空母や長距離戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイル(ICBM)等の保有は、憲法解釈上、認められないとしてきた。

 今回は、「いずも」を空母化しても、「防御型空母」とすることで、護衛艦としての位置付けを変更する必要はなく、憲法解釈上の整合性も取れると判断しているようだ。

 これら一連の動きに、もっとも反発する可能性があるのが中国である。

 「いずも」が就役した際、「日本が空母保有・軍国主義化」として、警戒感を露わにしたことは記憶に新しい。

 今のところ中国は「日本が専守防衛政策を堅持し、軍事分野で慎重に行動することを強く求める」という一般論での牽制(けんせい)にとどまっているが、正式に「いずも」にF35Bの搭載が決定されれば、反発は必至だろう。

 「いずも」の空母化は、間違いなく中国に対する抑止力としても効果がある。

(濱口和久)