自衛隊組織再考の潮時

 南スーダンPKO(国連平和維持活動)部隊の日報問題の責任を取り、稲田朋美防衛相、黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長が辞任した。日報をめぐっては、初動から防衛省の対応に不手際があったことは、誰の目にも明らかである。

 一方、野党は「廃棄済み」だった日報の電子データが陸上幕僚監部のパソコンから見つかった事実を、稲田氏が報告を受けていたか(知っていたか)を追及し続けた。

 稲田氏は最後まで、陸幕での日報保管の報告は受けていないと発言していたが、フジテレビが報じた2月13日の稲田氏と陸幕幹部との会議における手書きの議事録を読めば、稲田氏が報告を受けていたことは間違いなく事実だろう。

 あえて、批判を覚悟の上で申し上げれば、稲田氏が大臣を辞任した今、これ以上、稲田氏の対応を追及しても意味がない。それよりも、今後も自衛隊の日報を一般の行政文書として扱うべきなのかを議論するべきだ。

 さらに言えば、日報を情報公開請求に基づき、開示すべきものなのかについても議論するべきではないのか。

 日報にはPKO部隊の活動がすべて記録されている。日報を見れば、PKO部隊の編成・運用や、部隊の練度が一目で分かる。自衛隊の能力が丸見えになるのに等しい。

 情報公開請求に基づき、誰でも自由に部隊の行動が見られるということは、自衛隊にとっては手の内を敵に見せるようなものだ。各国の軍隊で、日報を一般行政文書と同じ扱いで公開しているところはどこにもない。

 また、防衛省では年間を通じて、膨大な数の情報公開請求が行われている。日報も紙に印刷すると1日分で100ページに及ぶ。対応する職員の数も予算も足りていないのが現状だ。

 今回の問題は、世界で唯一、自衛隊が「軍隊(軍事機関)」ではなく「行政機関」としてつくられたために起きた問題とも言えるだろう。

 これを機に、現在の歪な防衛省の組織体制(内局と制服組との関係)も含め、自衛隊が「行政機関」でいいのかについても、検討する時期にきているのではないかと、私は思う。