大改革の陸上総隊創設
陸上自衛隊は平成29年度予算案で、昨年度当初予算比1・2%増の1兆7706億円を計上している。この中には、平成30年に創設される「陸上総隊」に関する予算要求も含まれている。
陸上総隊は、現在の陸上自衛隊の5個方面隊(北部方面隊・東北方面隊・東部方面隊・中部方面隊・西部方面隊)を束ね、部隊運用の一元化の機能を担う。司令部は朝霞駐屯地(埼玉県和光市)に置かれ、島嶼防衛強化のための水陸機動団が新設される。
水陸機動団の司令部は相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に置かれ、北熊本駐屯地(熊本県熊本市)に司令部を置く第8師団と善通寺駐屯地(香川県善通寺市)に司令部を置く第14旅団を、最新型の16式機動戦闘車などを備えた即応機動連隊を中心とした機動師団や機動旅団に改編し、展開能力の向上を図るとしている。この他にも、西部方面隊内の各級部隊の最新化が図られる。「03式中距離地対空誘導弾(改)」を南西諸島に配備することも検討されている。
また、富士駐屯地(¥回転(90)¥長体(23)=富士学校・静岡県駿東郡小山町)に情報学校を新設。航空自衛隊美保基地(鳥取県境港市)内には、陸上自衛隊美保分屯地を開設し、中部方面ヘリコプター隊所属の飛行隊を新たに配置する。
従来から航空自衛隊には航空総隊が、海上自衛隊には自衛艦隊がある。陸上自衛隊はこれらと同じ機能を持つ組織を持っていなかったため、海空自衛隊との連携・調整に時間がかることが多々あった。陸上総隊の創設によって、この問題が解消され、陸海空自衛隊間の連携・調整がスムーズとなり、統合運用がやり易くなるだろう。
陸上自衛隊は、これまでも時代の変化に合わせて様々な組織改革を行ってきたが、陸上総隊の創設は最大の改革といわれている。
一方、対中国を想定した南西地域に対する防衛強化は当然であり、より一層の充実は必要であるが、北の脅威(ロシア)に対する備えが薄くなることだけは絶対に避けるべきである。
(濱口和久)