自衛隊に上から目線?

 熊本に「憲法と領土問題を考える」講演会の仕事で出張した。滞在中、熊本日日新聞(2月6日付)に次のような記事が掲載されていたので、少々長くなるが紹介したい。

 県教職員組合青年部のセミナーが4日、熊本市で開催された。ジャーナリストの布施祐仁さん(40)が「戦地に送られるのは誰か」と題して講演し、若者が経済的な理由で自衛隊に入る現状に警鐘を鳴らした。セミナーには約40人が参加。自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加している南スーダン情勢について、布施さんは「日本政府は武力紛争は発生していないというが、実際は全土に拡大している。自衛隊を撤退させないため事実をゆがめている」と指摘した。自衛官応募者が減少する中、隊員募集では経済的なメリットが強調されているとして、「貧しい若者が軍隊に入らざるを得ない米国のような『経済的徴兵制』が起きつつある」と懸念。「哲学者サルトルが言ったように、金持ちの起こす戦争で貧しい人が死ぬ。そんな社会は不公平だ」と訴えた。

 以上が記事の内容である。

 昨年、自衛官応募者が減少した背景には、布施さんのような態度のジャーナリストや、一部のマスコミの安保法制に対するゆがんだ報道が影響していることは、明らかだと私は思っている。

 布施さんは、日本も米国のように「貧しい若者が軍隊に入らざるを得ない『経済的徴兵制』が起きつつある」とも述べているが、自衛隊には以前から金持ち(裕福)の家庭の子弟たちはほとんど入隊していない。幹部自衛官を養成する防衛大学校も同様である。

 さらに言えば、戦前の帝国陸海軍にも金持ちの家庭の子弟は少なかったことを、布施さんはご存知ではないのか。

 南スーダンでのPKOの話を持ち出し、あたかも戦場に送られているかのような言い方だが、実際の戦場は、もっと厳しい環境だ。

 この記事で、布施さんは隊員のことを心配しているかのような態度だが、私には自衛隊を蔑む上から目線の態度にしか思えなかった。言い過ぎだろうか。

(濱口和久)