世界標準の防衛大臣へ
第3次安倍再改造内閣が8月3日に発足した。
今回の組閣で最も注目を集めたのは、稲田朋美氏の防衛大臣就任だろう。東京都知事に就任した小池百合子氏に続いて2人目の女性防衛大臣の誕生である。
稲田氏の防衛大臣就任を受けて、マスコミは人柄や政治信条について色々と論評していたが、ここで繰り返し同じ話をするつもりはない。
私が注目したいのは、防衛大臣というポストについてだ。
防衛省の前身である防衛庁時代、防衛問題に詳しい政治家は少なく、「防衛は票にならない」という意識から、防衛庁長官のポストはあまり重要視されない軽量級閣僚として扱われてきた。
防衛庁長官を2回経験した自民党の大物政治家は、1回目の防衛庁長官就任の打診が官邸からあった際、「何で私が防衛庁長官なんだ」と、激怒したというエピソードもあるくらいだ。
防衛庁は3流官庁と言われた時代もあった。防衛省になるまでは、歴代の事務次官は大蔵省や警察庁の出身者が就くことが多く、官僚を希望する学生の間でも、防衛庁は人気のある官庁ではなかった。
ところが湾岸戦争後、自衛隊の国際貢献活動への参加や、災害派遣での活躍などもあり、国民の自衛隊を見る目が変わってくると、それにあわせて防衛大臣の活躍する場面も増え、注目を集めるようになる。昨年の安全保障関連法の成立や、最近の中国や北朝鮮の軍事的動向も影響しているだろう。
さらに言えば、自衛隊を取り巻く環境が大きく変わる中、防衛大学校卒で陸上自衛隊出身の中谷元氏が防衛大臣に就任。民間人初の防衛大臣となった森本敏氏(現・拓殖大学総長)も防衛大卒で航空自衛隊出身だった。一昔前であれば自衛隊出身者が防衛大臣に就くなど、誰が想像しただろうか。
海外では従来から外交や防衛を担当する閣僚は重要視されてきた。日本の防衛大臣もようやく世界標準の位置づけになりつつある。