防衛大出身者の絆

 毎年7月1日は自衛隊幹部の定期異動の日だ。幹部自衛官は平均1年~3年程度で異動する。幹部自衛官は異動を重ねることで、さまざまな経験を積んでいく。途中、自衛隊の各種教育機関にも入校する。私がいた陸上自衛隊では、幹部初級課程(BOC)、幹部上級課程(AOC)、指揮幕僚課程(CGS)などがそれに相当する。一般の大学や大学院、海外留学、企業や外部団体で研修を受ける幹部自衛官もいる。

 話を定期異動に戻す。連隊長や群長を経験した私の同期数人が、同期のトップを切って、陸上幕僚監部各課の課長ポストに戻ってきた。陸幕における課長職は、陸自の防衛計画・教育・訓練・装備・兵站について取りまとめる重要なポストだ。

 陸幕を含めた市ヶ谷の防衛省に勤務する同期は、毎月1回程度、有志で集まり同期会を開催している。私は途中で退職しているが、数回、市ヶ谷の同期会に参加させてもらった。私のような途中で退職した者を温かく受け入れてくれる同期には感謝するばかりだ。

 一方、私と同じように途中で民間に転出している防衛大の卒業生は、学生時代に一度も面識がなくても、防衛大出身というだけで、卒業期別に関係なく親しくなれる。防衛大出身者の特徴といえる。

 私は退職後、民間で活躍する多くの先輩に助けられてきたが、やはり「同じ釜の飯」を経験した者同士だからこその関係だと思っている。一般の大学だと、同じ卒業生というだけでは、すぐに親しくなることはないだろう。

 また、私の同期の大多数は、今後10年以内に定年退職を迎える。警察官、消防官、海上保安官の定年退職は、一般の公務員と同じ60歳だが、自衛官の場合は、将官(将・将補)を除けば、1佐以下の階級の自衛官は55歳で定年退職となる。

 55歳という年齢は、まだまだバリバリ活躍できる年齢である。定年退職後は自衛隊での経験を生かして民間で活躍する場所は無数にあるはずであり、私も側面から応援していくつもりだ。防衛大出身者の「絆」は永遠に続いているのある。

(濱口和久)