東大に軍事研究の萌芽

 自衛隊専門紙(朝雲1月7日付)に次のような記事が掲載されていた。

 自衛隊地方協力本部長の梶原直樹陸将補が、東京大学工学部で学生約190人に対し「産業総論」の講義を行った。平成16年から東大大学院工学研究科機械工学専攻の教授の依頼を受けて実施しているもので、昨年11月18日に「軍事と科学技術」というテーマで講義が行われた。

 この中で梶原地本長は、外国で使用されている無人機などを挙げ、「軍事技術の趨勢と将来の戦い」について解説。講義の合間には、自衛隊の災害派遣活動などについても紹介した。講義後の質疑では、学生から「防衛省では装備品の研究開発をどのように行っているのか?」「研究者のキャリア形成は?」などの質問があったという。

 平成20年5月24日には、東大の学園祭「五月祭」に現職の航空幕僚長である田母神俊雄氏が学生サークル「国家安全保障研究会」に招かれて講演し、世間で話題となった。

 また、東大大学院情報理工学系研究科が軍事に関する研究についてのガイドラインを平成26年12月に一部改定した。それによると、「一切の例外なく軍事研究を禁止する」という文言が削除されて、「成果が非公開となる機密性の高い目的とする研究は行わない」という表現に変更された。東大としては、軍事研究を解禁したわけではないと表明しているが、一定の軍事研究が可能になったと解釈することができる。

 これら東大の一連の流れは評価すべきことである。だが一方、旧帝国大学の東北大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学は、昔から自衛官の身分のままでも研究科の受験を認めてきたが、いまだに東大だけは事実上、認められていない。東大には大学院の社会人入試を通過した公務員や民間人が学んでいる。にもかかわらず、自衛官だけが受け入れられないのは、どういうわけだろう。実力ではなく職業が選考基準となるようでは東大の名が泣くのではないだろうか。

(濱口和久)