民間医出身の医官誕生
自衛隊の福岡地方協力本部で予備自衛官補(技能=医師)として採用され、その後、技能公募予備自衛官として勤務していた伊藤実予備2等陸佐(48歳)が、「医科・歯科幹部採用試験」に合格。10月1日付で医官(2佐)として採用された(自衛隊専門紙・朝雲新聞12月10日付)。
予備自衛官から医官への「転進」は伊藤2佐が全国で初めてだ。現在は、自衛隊福岡病院(福岡県春日市)に内科医として勤務している。
伊藤2佐は、福岡市内の民間病院で内科医として勤務しながら、平成19年7月に予備自衛官補として採用され、さらに10日間の教育訓練を受け、同年9月に予備自衛官に採用されていた。
伊藤2佐は医官を目指した理由を次のように述べている。
「12年間にわたって予備自衛官として活動する中で、陸上自衛隊に対する親近感が湧いてきた。自衛隊員の心身の健康を守り、部隊の精強さの維持に寄与したいと思うようになった」(同紙)。
通常、医官になるには、防衛医科大学校(埼玉県所沢市。以下、防医大)を卒業するか、一般大学の医学部を卒業し、幹部候補生学校の試験に合格しなければならないが、ほとんどが防医大出身者で占められている。自衛隊は創設当初から慢性的な医官不足に悩まされてきた。医官不足を解消する目的で設立されたのが防医大である。
医官になると、自衛隊中央病院(東京都世田谷区)、全国の自衛隊病院、陸海空の部隊・基地などに勤務することになる。
以前、私は文藝春秋から発行されていた雑誌『諸君!』(平成18年10月号)に「なぜ、『軍医』が不足するのか」という原稿を寄稿したことがある。その中で、医官の早期退職(防医大卒業後、9年以内に退職)問題を指摘した。
伊藤2佐のように民間病院の勤務経験がある医師が医官となることは、最初から医官として勤務している防医大出身の医官にとっても刺激となるに違いない。
日本の国際貢献・緊急援助活動での医官の出番は確実に増えており、今後は第2、第3の伊藤2佐が生まれることだろう。
(濱口和久)