「IS」関連必読の書
最近、日本では「イスラム国(IS)」に関する報道がめっきり減っている。
一時は次々と「イスラム国」関連本が出版され、書店の新刊コーナーに平積みにされていたが、いまはほとんど並んでいない。日本人2人が殺害された事件があったことを、忘れている日本人もいるだろう。
日本国内で「イスラム国」への関心が薄れるなか、ジャーナリストの丸谷元人氏が、4月に入り、『なぜ「イスラム国」は日本人を殺したのか』(PHP研究所)を出版した。
丸谷氏はオーストラリア国立大学大学院修士課程を中退。オーストラリア国立戦争記念館の通訳を皮切りに、通訳業務に従事後、国際派ジャーナリストとして活躍している人物だ。また、アフリカの石油施設におけるセキュリティ・マネージャー業務の経験もあり、海外セキュリティ・コンサルタントとしても活動している。
本書は、実際に丸谷氏が現地で体験した話や、情報収集・取材をもとにして書かれており、いままで日本で報道されてきた「イスラム国」のイメージを大きく変える内容となっている。「イスラム国」についての新たな情報も満載だ。
特に「イスラム国」に対して、誰が武器・資金援助をしているのかについても、丸谷氏は触れている。ここで詳しく紹介してもいいが、是非とも本書を手に取って各自で読んでもらいたい。
著名なジャーナリストや国際政治の専門家が「イスラム国」による日本人殺害事件について書いているが、丸谷氏の分析は、いままでに書かれた内容よりもはるかにリアルであり、世界の裏側で起きている本当のことを知るうえで、おおいに参考になる1冊である。
特に内調、防衛省、外務省、警察庁などで情報収集・調査・分析に携わる人たちには、是非とも本書を読んでもらいたい。
丸谷氏の著書は他にもある。『日本軍は本当に「残虐」だったのか』『日本の南洋政策』(以上、ハート出版)なども合わせて一緒に読んでもらえると、面白いと思う。
(濱口和久)