最も若い自衛官の卵

 春は自衛官にとって定期移動(転勤)の季節だ。

 特に今春の移動では、1佐職の陸上自衛隊の同期が普通科連隊長、特科連隊長、後方支援連隊長などの部隊指揮官のポストに次々と就いた。

 自衛官、特に幹部自衛官は、平均2~3年の周期で移動する。

 定年退職するまでに20回以上も移動する幹部自衛官もいる。

 一般のサラリーマンと同様に、幹部自衛官も子供が中学生ぐらいまでは家族で移動するが、子供が高校生になるころには、単身赴任で移動するケースが多い。

 防衛大学校の先輩、同期、後輩から、移動のたびに「移動の挨拶状」が自宅に届くが、最近はほとんどが単身赴任だ。

 幹部自衛官は、東京・市ヶ谷の防衛省や日本全国の部隊・学校勤務を繰り返しながら、様々な経験を積んでいく。別の表現をすれば、移動の回数は自衛官の勲章ともいえるかもしれない。

 また、春は入学の季節でもある。4月8日、陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)で入校式が開催された。

 同校は陸上自衛隊生徒の教育を担任する学校として、平成22年3月26日、陸上自衛隊少年工科学校から改編された。

 入校してくる生徒は、中学校を卒業し、日本全国から選抜試験を経て採用される。日本の中で、もっとも若い自衛官の卵たちだ。

 生徒は、防衛大学校学生(防衛省職員)と同様、自衛官の定数外となっているが、将来の陸上自衛隊の中核を担う陸曹になるための教育を受ける。

 加えて、すべての生徒が、銃剣道等の体力練成に加えて活発なクラブ活動を実践しており、全国大会等で優秀な成績を残す生徒もいる。卒業後、防衛大学校や航空学生を受験する生徒もいる。

 自由を謳歌したいと思う若者が大多数を占めるなか、中学卒業と当時に国防に目覚め、高等工科学校に入校してくる若者がいることは、日本人としての誇りでもあり、財産であると筆者は思う。

 現役の自衛官もさることながら、自衛官の卵にも大いに期待したい。

(濱口和久)