社会に出た防大卒業生
毎年3月は卒業式のシーズンだ。わが母校である防衛大学校(以下・防衛大)でも、首相が出席して卒業式が行われる。
防衛大の卒業式は、最後に卒業生が学生帽を投げ上げるシーンが有名で、テレビのニュースでも紹介される。加えて、毎年、任官辞退者の数も話題となる。
筆者は任官辞退を推奨するわけではないが、防衛大で学んだ学生が一般社会に出ていくことは必要だと思う。
自衛隊は国内の災害派遣や、国際貢献での活躍により、国民から信頼され、期待される存在となってきたが、まだまだ国民に自衛隊が正しく理解されているとは到底思えないからだ。
防衛大生は身分が特別職国家公務員であり、学生手当(月額10万8300円)、期末手当(年2回で合計約31万9000円)が支給される。防衛医大、海上保安大学校、気象大学校の学生なども同様の手当を支給されている。
そのため、任官辞退者は「税金泥棒」と批判されることもあるが、最初から幹部自衛官を目指してくる学生や、推薦入学を除けば、第1志望で防衛大に入学してくる学生は1割程度しかいないのが現実の姿だ。
一時期、任官辞退者に対して、防衛医科大と同様に、防衛大も卒業時に学費等の返還を求める動きがあった。ちなみに、防衛医大では、任官辞退者や任官後9年以内に自衛隊を退職する場合、最高で4811万円を返還した学生もいる。
現在、任官を辞退した卒業生の中には、新聞社の記者となり第一線で活躍している者や、大手出版社の社長、上場企業の社長や役員、大学教授に就いている者もいる。
防衛大は4年間、全寮制で生活する。「同じ釜の飯」を食べたということで、先輩・同期・後輩の繋(つな)がりが卒業後も非常に強い。この関係は自衛隊に進もうが、一般社会に進もうが続いていく。
自衛隊に進んだ学生と一般社会に進んだ学生とが連携することによって、国防思想の啓蒙・啓発や、自衛隊への正しい理解に一役買うと思うのだが、本紙読者はいかに思われますか。
(濱口和久)