沖縄の民意と報道倫理

 安倍晋三政権は1月14日、一般会計の総額が過去最大規模の96兆3420億円となった平成27年度予算案を閣議決定した。予算案の中で、防衛費は前年度比2・0%増の4兆9801億円が計上され、第2次安倍政権発足以降3年連続の増額となった。それに加えて、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設経費として、前年度の2倍に当たる約1500億円を計上している。

 防衛費と米軍普天間飛行場の移設費用が増額されたのとは対照的に、沖縄振興費は前年度比4・6%減の3339億円となった。

 これら一連の予算案を受けて、同日夜に放送されたテレビ朝日の報道ステーションでは、予算配分のあり方に疑義を呈していた。

 特に米軍普天間飛行場の移設費用が増額になったことに対して、「沖縄の民意を理解していない安倍政権」というようなムードを醸し出すコメントを、キャスターの古館伊知郎氏とコメンテーターの恵村順一郎氏(朝日新聞論説委員)が発していた。辺野古沖の移設予定地のゲート前に座り込みをしている反対派にマイクを向けている映像もあわせて放送していたが、映像の中に登場していた反対派の人達は、言葉のイントネーションからして、明らかに沖縄の人達ではなく、本土から日当をもらって沖縄に来た反対派の人達だった。これが沖縄の民意だとして放送する報道ステーションの倫理観を疑いたくなる。

 沖縄振興費が減額されたことに対しても、古館、恵村の両氏は、辺野古沖への移設に反対している翁長雄志知事に対する「イジメに近い仕打ちのようなものだ」と言わんばかりのコメントを発していたが、今までの沖縄振興費が利権化し、一部の沖縄の人達だけが潤う状態になっていることに対しては、どのように思っているのか。

 最後に、沖縄問題を考えるうえで、最近出版された大久保潤・篠原章共著の『沖縄の不都合な真実』(新潮新書)の一読をお勧めしたい。

(濱口和久)