自衛隊の覚悟と能力
北朝鮮による拉致被害者の再調査をめぐり、日本政府は担当者を北朝鮮に派遣することを決めた。果たして成果はあるのだろうか。答えは「NO」だ。
それでも派遣するのであれば、日本政府は相当の覚悟が必要である。拉致事件の全面解決が日本の立場であり、北朝鮮のいい加減な態度が繰り返されるのであれば、ただちに席を立ち帰国するべきだろう。
拉致事件は北朝鮮による日本人の誘拐であり、日本に対する主権侵害行為なのである。日本人が拉致されていることが分かっている以上、日本政府はあらゆる手段を使って、日本人を奪還する手立てを講じるべきだ。このままでは拉致被害者を北朝鮮から奪還することは絶対にできない。
拉致被害者家族会や拉致議連の国会議員が米国を訪れ、大統領や政府高官に拉致事件解決に向けての協力をお願いしたことがあったが、日本に拉致被害者を北朝鮮から奪還する能力がないのだろうか。筆者はそうは思わない。
日本の自衛隊は何のために存在しているのか。日本の主権と独立を守り、国民の生命と財産を守るために自衛隊は訓練をしているのであり、誤解を恐れずに言えば、日本人を北朝鮮から奪還する過程で、自衛官に犠牲者が出る恐れがあったとしても、必要があるならば、自衛隊を投入することを日本政府は検討するべきである。
なぜなら、自衛官は自衛隊に入隊する際、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います」と宣誓しているからだ。
一方、自衛隊には「拉致被害者を奪還する能力がない」という意見を持つ識者もいるが、自衛隊を過小評価し過ぎている見方である。
自衛隊は訓練中の事故による殉職者を除いて、誰一人として死者を出したことがない世界でも稀な組織(軍隊)でもあるが、自衛官の死者を恐れて、拉致被害者を北朝鮮に置き去りにすることは、絶対に許されないと筆者は思っている。
(濱口和久)