災害派遣と自衛隊

 御嶽山の噴火から約2週間が過ぎた。現在も自衛隊は、第13普通科連隊(松本市駐屯地)、第2普通科連隊(高田駐屯地)、第12ヘリコプター隊(相馬原駐屯地)などの部隊を中心に、行方不明者の救助・捜索活動を続けている。 今年に入ってから自衛隊は数多くの災害派遣に出動している。警察や消防だけで対応できる災害にも、自衛隊は災害派遣の要請があれば、出動している状態だ。

 しかし、自衛隊は災害派遣のために、日頃から厳しい訓練を行っているわけではない。

 自衛隊の第一義的な任務は、「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛する」(自衛隊法第3条)ことであり、人命救助などの災害派遣は、副次的な任務なのである。

 ところが、これだけ自衛隊が頻繁に災害派遣に出動するようになると、「災害の発生=自衛隊の出動」のような構図になっている。御嶽山での行方不明者の救助・捜索活動では、自衛隊が装備しているCH47大型輸送ヘリで山頂付近に隊員(警察・消防の隊員も含む)を運び、機動的な活動を展開している。

 東日本大震災以降、一部の識者の中には、「自衛隊(特に陸上自衛隊)に災害派遣専門組織を創設すべきではないか」とする意見がある。

 筆者は、この意見には断固反対だ。自衛隊が災害派遣に出動すること自体に反対するものではないが、自衛隊の任務は、前述の通り「我が国の防衛」であるからだ。

 自衛隊は今年で創設60周年を迎えた。税金泥棒と言われた時代もあったが、今や国民の大多数が、自衛隊を頼りになる存在だと認めている。

 自衛隊が国民のために一番力を発揮しなければならないのは、災害発生時ではない。日本が戦争や紛争に巻き込まれたときだ。そのときこそ自衛隊の真価が問われることになる。

 誤解を恐れずに言えば、「災害派遣は自衛隊にとっては朝飯前の任務」なのである。

(濱口和久)