動き出す李登輝総統記念図書館ー台湾から


地球だより

台湾の李登輝元総統が台北市で逝去、97歳

 

 李登輝基金会は、台湾の民主化を進めた李登輝元総統逝去から1年となる7月30日の前日に台北市内で記者会見を開き、「李登輝総統記念図書館」の設立が具体的に動き出したことを報告した。

 設置場所となったのは、国立台湾大学が保有する旧法学院キャンパスだ。その前身は日本統治時代の台北高等商業学校で、現存する1922年に建設された建物は台北市の古蹟に指定されている。

 大学機能は数年前に本部に移転しており、大学側も再活用に頭を悩ませていたところだったという。

 総統府や立法院などにも近く、台北市内の中心に位置するこの場所だが、決め手となったのは李元総統や歴代総統との縁の深さだった。

 蒋経国総統に抜擢(ばってき)されて政界に入るまで、李元総統は農業経済学の研究者であり、台湾大学教授でもあった。まさにこの場所で教壇に立っていたのである。さらに、陳水扁、馬英九、蔡英文の歴代総統はいずれも台大法学部の出身で、このキャンパスで学んでいたのである。

 縁はさらにある。このキャンパスの斜め向かいには「市長官邸」という名のカフェがある。1994年まで実際に市長官邸として使われていた日本統治時代の建物で、台北市長時代の李氏も家族と共に居住していた。設置根拠や財源確保の立法など、解決しなければならない問題があるというが、開館後には李元総統の功績を振り返り、偲(しの)ぶ場所として、多くの日本人も訪れる場所になることを願うばかりだ。

(H)