感染ゼロの国々の実情は? 北朝鮮には報告を求めよう
世界保健機関(WHO)の新型コロナ状況報告で、26日現在感染が報告されているのは179カ国と33地域(WHO-中国蜜月関係のせいで、台湾の名はどこにもない)。感染報告ゼロは15カ国だ。だがこの15カ国もそれぞれに問題を抱えている。
まずは北朝鮮。「感染ゼロ」と言うが、ほぼ誰も信じていない。「3月下旬で死者が1万人以上」(西岡力氏=月刊Hanada6月号)ともいう。米「自由アジア放送」も先日、「住民集会で当局者が『平壌など3地域で感染が発生した』と述べた」と伝えた。規律違反感染者の処刑情報もあった。
同類の強権国家でゼロなのが、中央アジアのトルクメニスタン、タジキスタンだ。前者は、国際NGOの自由度調査で北朝鮮よりも点数が低い。国民が「新型コロナ」と言っただけで拘束されるとの外国メディア報道は少々オーバーだったようだが、「大統領の言葉が法律」の国で、大統領は「コロナ」の語を口にするのが大嫌いとか。
アフリカのゼロは、南部の小国、レソトとコモロだけになった。周囲を感染者数アフリカ一の南アフリカに囲まれたレソトのゼロも奇跡的だ。20年来、HIV(エイズ・ウイルス)感染率世界2位の国である。20年前私が国連協力調査チームで訪れた時、政府は「将来の国造りのため留学生を外国に派遣しているが、今年は予定者全員が感染者だった」と、嘆いていた。
今回、3月から非常事態を宣言し、国の封鎖を実施して懸命に防衛しているが、国民はネットで「検査ができないからゼロ。世界の皆さん、検査キットやマスクなどを下さい」と切実に訴えている。
他の報告ゼロ10カ国は太平洋の島国である。
半世紀前のベストセラー「天国に一番近い島」(森村桂)の題名がピッタリの感じだが、温暖化で海面上昇の危機におびえ続ける。サモアは昨年末、はしかの大流行に見舞われた。バヌアツなどは先日、大サイクロンで国民の半数が被災した。ナウルもツバルもキリバスも国内に大病院は一つだけ。大規模集団感染が一つ起きたら即アウトだ。3月以来多くの国が封鎖や非常事態を宣言し、ハリネズミ的に身を固めている。
中東のイエメンも今月10日までゼロだった。現在感染者1。内戦とコレラと飢餓、世界最悪の人道危機の国でよく検査できたものだ。3月末、反政府側は「政府側支援のサウジアラビア軍機がコロナ付きマスクを投下している。絶対触れるな」と市民に警告した。コロナも内戦と宣伝戦のカードになる。
HIV2位も三重苦の天国も、薄氷の上で援助協力を待ち望んでいる。太平洋の島国群は中国の拡大戦略の要衝だが、台湾と外交関係を持つ国々も残る。その切り崩しも狙い、中国は190万ドルの医療物資援助を始めた。レソトには、中国人億万長者が検査キット2万個を寄付した。
北朝鮮にも早く対コロナ医療援助をするべきだ、との声がある。同感だが、ちゃんとした事実報告を求めてからだろう。
北朝鮮は、国際規範や規則を無視しても「あの国の流儀だから」と特別扱いされ続けてきた。国際会議出欠も直前まで明らかにしない。18年の平昌五輪と世界卓球選手権でも、文政権の韓国の支援で酷(ひど)い規則破りの参加をした。
報告なしでも支援するのは特別扱いである。感染クロ情報がいっぱいなのだから、WHOは北朝鮮にもっと実情を報告するよう強く求め、働き掛けるべきだ。
金正恩委員長の重体説も流れている。だがビッグブラザーが健在でもビッグシスターになっても、国際社会が特別扱いを続ける限り北朝鮮は無法国家のままだろう。






