みずほ改善命令 問われる経営体制の在り方


みずほ銀行(Wikipediaより)

みずほ銀行(Wikipediaより)

 金融庁は、システム障害が多発しているみずほ銀行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に、銀行法に基づく業務改善命令を出した。再発防止の徹底を図るため、継続中の検査の結果を待たずにシステム運営の監督を強化する異例の行政処分となる。

 度重なるシステム障害で顧客の信頼は失墜している。障害の原因究明と経営責任の明確化を急ぐべきだ。

 度重なるシステム障害

 みずほ銀では、今年2月と3月に現金自動預払機(ATM)にキャッシュカードが取り込まれるなどのシステム障害が4回発生。6月には再発防止策を発表したが、8月以降も3回の障害が表面化した。

 8月の店舗窓口における取引停止については、いまだに原因が明確になっていない。このままでは金融システム全体への信頼が揺らぎかねない。

 今回の命令は、障害が繰り返され、原因の完全解明に至らない事態を重くみたものだ。障害のきっかけとなりやすいシステム更新の計画見直しや再検証を指示し、更新する際は適切な管理態勢を確保するよう求めた。

 再検証や態勢確保については10月29日までの報告を命じた。金融庁が、報告された内容の必要性や合理性をチェックし、作業の適正化を図る。みずほに再発防止策を任せておけないとの判断だろう。みずほは命令を深刻に受け止める必要がある。

 システム障害に伴うみずほへの業務改善命令は、2002年、11年に続き3回目となる。みずほは大規模なシステム障害への反省から、4000億円超を投じてシステムを刷新。19年に現在の基幹システム「MINORI」を稼働させた。

 ただ、システム完成後に開発要員の大幅な削減を実施。「新システムに詳しい人材が少なくなった」(関係者)ことが度重なるトラブルの原因になった可能性がある。

 みずほのシステム障害で特に問題なのは、サービスを続けるためのバックアップ機能が働かないことだ。他の銀行でもシステム障害は一定の頻度で発生しているが、バックアップ機能が稼働しているため、トラブルにはつながらない。原因解明が急がれる。

 何よりも問われるべきなのは経営体制の在り方だ。今年6月に公表された第三者委員会の調査報告書は、システム障害の根底に「経営陣以下のシステムリスクに対する感度の低さがある」と指摘。こうした危機感の低さは、これまでも再三にわたって問題視されてきた。

 みずほグループは00年、第一勧業、富士、日本興業の3行が経営統合して発足した。しかし旧行意識から抜け出せず、旧行間の対立を避けるため、意見を言わない企業風土があるとされる。こうした体質もシステム障害の背景にあろう。

 経営責任を明確にせよ

 みずほは6月発表の再発防止策で、坂井辰史FG社長の減給6カ月、みずほ銀の藤原弘治頭取の減給4カ月を含む幹部11人の処分を行ったが、その後もシステム障害を防げなかった。改めて経営責任を明確にする必要がある。