新型コロナ、フィリピンで新防疫システム


ワクチン接種者限定の営業緩和
中国製ワクチン敬遠するダバオ市

新型コロナウイルスワクチンの瓶を持つフィリピンのシャヒーン氏 ドゥテルテ大統領=3月4日、マニラ(AFP時事)

新型コロナウイルスワクチンの瓶を持つフィリピンのシャヒーン氏 ドゥテルテ大統領=3月4日、マニラ(AFP時事)

 フィリピン政府はこれまでの広範囲なロックダウン(都市封鎖)による新型コロナウイルスの封じ込めを方針転換した。そして今回、局所的なロックダウンとワクチン接種の推進による本格的な経済再開に舵(かじ)を切った。コロナ禍が始まって以来、禁止を続けてきた学校での対面授業も部分的に再開する。一部の都市では中国製ワクチンを避ける動きも出ている。
(マニラ・福島純一)

 政府は9月14日、マニラ首都圏で16日から「警戒レベルシステム」を試験的に導入すると発表した。これまでの検疫システムに代わり、地域の医療施設の逼迫(ひっぱく)や感染拡大の状況などから5段階の警戒レベルで感染に対応していく。これに加え、感染者が発生した家屋やビルのフロア単位など局所的なロックダウンに集中し、経済に大きな影響を及ぼす都市や州単位の大規模なロックダウンはしない方針だ。マニラ首都圏は2番目に厳しいレベル4からのスタートとなる。

 これに伴い飲食店や理髪店、マッサージ店の再開など経済活動への規制緩和を実施する一方で、店内サービスに関してはワクチン接種者に限定するという規制強化も同時に進める。利用者からは反発の声も出ているが、政府はこの規制によりワクチン接種を国民に浸透させたい構えだ。

 フィリピン国内の感染状況は、連日2万人前後と高止まりが続いており予断を許さない状況だが、死亡率は低下しており保健省はワクチン接種の効果を強調している。

 また政府は20日、コロナ禍が始まって以来、禁止が続いてきた学校での対面授業に関しても再開する方針を示した。ワクチン接種にある程度の目処(めど)がつき、ようやくドゥテルテ大統領のゴーサインが出た形だ。遠隔授業をめぐっては、不安定なインターネット環境や貧困層への経済的な負担などから、学生の学力低下が専門家などから危惧されていた。

 対面授業は感染リスクの低い地域で試験的に2カ月間行い、その結果を踏まえて全国展開していく計画だ。授業に参加する生徒は保護者の許可を得る必要がある。対面授業の再開に関しては、過去にも何度か部分的に再開することを決定していたが、変異株の拡大などにより先延ばしとなっていた。

 マニラ首都圏だけでなく地方でもワクチン接種が進められているが、一部の都市では中国製ワクチンを敬遠する動きも出ている。ドゥテルテ大統領の長女でダバオ市長のサラ氏は、市民が中国のシノバックやシノファームのワクチンを敬遠する傾向があり、米国のファイザーやモデルナを使用したときと比べて、接種目標数を達成しにくいと現場の状況を説明。ワクチンを提供する政府に対し、米国製ワクチンの調達を優先すべきだと提言し、ダバオ市に中国製ワクチンを送らないよう要請した。

 政府はできるだけ多くの国民にワクチンが行き渡ることを最優先に、入手しやすい中国製ワクチンを大量に調達している。

 国民がワクチンの種類を選(え)り好みしないように、接種会場では直前にワクチンの種類が告げられるシステムとなっている。政府は一貫してどのワクチンも同様の効果があると強調しているが、米国製ワクチンをヤミ接種する違法行為なども横行している実態もある。

 マニラ首都圏では修道院や孤児院など閉鎖的な施設での集団感染が問題となっており、ケソン市にある修道院では64人の修道女と50人の労働者が検査で陽性となり修道院がロックダウンされた。22日の段階でマニラ首都圏の135カ所で局所ロックダウンが行われているが、マニラ首都圏開発局のアバロス局長は、「市民が規律を守って感染は減少し経済活動も続いている」と述べ、新防疫体制が成功に向かっていると分析。さらなる規制緩和の可能性を示唆した。