宮古島に陸自警備部隊を配備

南西諸島防衛の空白埋める

 陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)が3月下旬に開設した。緊迫する南西諸島周辺情勢の下、沖縄本島と与那国島にしか配備されていなかった陸自を同島にも配置したことで、防衛上の空白を新たに埋める意義がある。ただ、防衛省が住民に事前説明をしなかったことから反発が強まり、弾薬を島外に搬出した欠陥を抱えての船出となった。(沖縄支局・豊田 剛)

今年度中に対空・艦部隊も
弾薬保管態勢の整備が急務

 宮古島駐屯地で7日、宮古警備隊隊旗授与式・宮古島駐屯地新編行事が開かれ、隊旗が岩屋毅防衛相から田中広明宮古警備隊長兼駐屯地司令に渡された。3月26日に発足した宮古島駐屯地の宮古島警備隊は約380人規模。今年度中にも対空部隊と対艦部隊が配置され、約700~800人規模になる。

岩屋毅防衛相(左)と田中広明宮古警備隊長

岩屋毅防衛相(左)から隊旗を受け取った田中広明宮古警備隊長=7日、沖縄県宮古島市

 防衛大臣訓示で岩屋氏は、「宮古島警備隊の発足は『島嶼を守り抜く』というわが国の確固たる意思を示すとともに、南西諸島地域における各種事態への対処の礎を築くもの」と述べた。

 田中警備隊長は答辞で「厳しい安全保障環境を深く認識しながら、宮古列島の平和を守る」と決意を述べた上で、①任務への即応②訓練精到③家族・地域と共に歩む――という部隊・駐屯地の目標を明示。記者会見では、「防衛の空白地帯を埋めることになり、抑止力の強化につながる」と部隊配備の意義を強調した。

宮古島駐屯地

宮古島駐屯地の正面入り口

 式典には国会議員、地元首長・議長、防衛関連団体の代表、自衛隊幹部ら多くの来賓が参加したが、祝賀ムードは敷地外での自衛隊反対派のシュプレヒコールにかき消されることとなった。

 地元への説明不足が原因で、防衛省は駐屯地に保管されていた中距離多目的誘導ミサイルと迫撃砲の全弾薬を、6日までに島外に搬出した。岩屋氏は、式典に先立ち、下地敏彦市長や地元関係者らに謝罪し、事態の鎮静化を図った。防衛省は今後、地元の説明を経て、駐屯地から約15㌔離れた島東部の採石場「保良鉱山」に弾薬庫を整備したい考えだ。

400

 警備部隊は有事の際の初動対処や島嶼奪還を任務とする水陸機動団など本土からの増援部隊受け入れを担う。侵攻する敵の舟艇や上陸部隊と対峙する際、弾薬は部隊に不可欠だ。

 岩屋氏は、「事態が緊迫した場合には弾薬を宮古島に緊急輸送することで即応性に影響がないよう努める」と説明。田中警備隊長は、「緊急事態の兆候がある場合は上級部隊と連携して緊急的に弾薬を取得するため問題ない」と強調した。

 これに対して元自衛官の男性は、「弾薬の撤去は丸腰であることを周辺国にアピールするようなもので言語道断」と苦言を呈した。宮古地区自衛隊協力会の幹部も、「隊員の士気が下がらないか心配な部分があることは否めない」と話した。新たな弾薬庫整備が反対派の活動を活発にさせる懸念も生じている。安全保障の観点から、早い段階で駐屯地内に弾薬を保管する態勢を整えることが急務だ。

岩屋防衛大臣の訓示要旨

迅速に対応可能な体制整備

 宮古島は東シナ海と太平洋を隔てる要衝に所在する。半径200㌔圏内には尖閣諸島や八重山諸島が含まれる国防の最前線だ。宮古島警備隊は、「島嶼(とうしょ)を守り抜く」という確固たる意思を示すとともに、南西地域における各種事態への礎を築くものであり、日本の防衛上、極めて重要な意義を有する。

 日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。朝鮮半島情勢に目を向けると、2回目の米朝首脳会談の開催にもかからわず、北朝鮮は依然として日本全域を射程に収める弾道ミサイル数百発を実戦配備している。

 中国は、軍事力を広範かつ急速に強化しつつ日本周辺の海空域における活動を拡大・活発化させている。尖閣諸島周辺では中国の公船が領海への侵入を繰り返しているほか、海軍艦艇が活動を恒常化させている。また、宮古海峡を経由した海軍艦艇や戦闘機、爆撃機の進出も急速に増加しつつある。

 南西諸島は、全長が1200㌔にも及ぶ広大な面積を有する一方、沖縄本島と与那国島以外に陸上自衛隊の部隊が配備されていない防衛の空白状態になった。この地域に、自然災害を含め、いかなる事態にも迅速に対処できる体制を整えることは、自衛隊にとって大きな課題だった。

 本年、新たな「防衛計画の大綱」の下、陸海空という従来の領域に、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域を融合させた、「多次元統合防衛力」の構築に向けた取り組みを始めることなる。

 とりわけ、島嶼防衛という困難な任務を担う宮古警備隊においては、陸海空の統合運用をさらに深めつつ、それに新領域を組み込む必要がある。