米に安保関与強化求める 台湾総統が米研究所での中継で講演
台湾の蔡英文総統は9日、インターネット中継を通して米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)などで講演し、台湾への軍事的圧力を強める中国を批判。民主主義の価値観を共有する米国に対し、台湾の安全保障への関与を強化するよう求めた。
蔡氏は、中国軍機が先月末、台湾海峡の中間線を越えて台湾本島側の空域に侵入したことについて、「過去20年の間、平和と安定に貢献した暗黙の合意を破った」と非難。また、中国による介入について、「情報源の管理、政治的な破壊工作を通して、中国は台湾の社会を分断させ、同盟関係を疑うように仕向けている」として、台湾の民主主義が危機にさらされていると強調した。
その上で、「中国の膨張主義的な行動は自由世界にとっての脅威だ」とし、米政権の上層部が「台湾の安全が民主主義の防衛にとって不可欠であると考えることを明確にすることを望む」と訴えた。
蔡氏はまた、中国は主に経済をテコとして圧力をかけるため、「台湾経済を多様化し、中国への経済依存を減らすことが重要」だと指摘。米国との貿易協定の締結を改めて要望した。
日本について蔡氏は「我々にとって非常に重要な関係だ」とし、インド太平洋地域の経済的繁栄や安全保障の強化に向け、米国に加え日本とも協力する考えを示した。
この日、CSISでは、制定から10日で40年になる台湾関係法をテーマにシンポジウムを開催し、東アジアの専門家や元外交官らが参加。蔡氏の講演では、アーミテージ元米国務副長官が経歴などを紹介し、その後グリーン元米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が司会役を務めた。
(ワシントン山崎洋介)