郷土の自然を守りたい、NPO法人が講座開催
石狩市で「自然案内人」を養成
日本海・石狩湾に面し、北海道内で古い歴史を持つ石狩市。背後に道都札幌を擁し、その衛星都市となっているが、市内には意外にも豊富な自然が残されている。その一つが総延長25キロに及ぶ石狩海岸。砂浜本来の形状を残し、豊富な海浜植物など特有の動植物が生息する。その石狩海岸の自然を保護・保全する「石狩自然案内人」を養成しようと、石狩浜海浜植物保護センターの事業受託団体であるNPO法人「いしかり海辺ファンクラブ」がこのほど、養成講座を開催した。受講者は10人に満たなかったが、それでも参加者は地域の自然を守る大切さをしっかりと身に付けた。(札幌支局・湯朝 肇)
ボランティアをスキルアップ
「石狩市内に住んでいますが、石狩海岸がこんなにも豊かな自然に恵まれているとは。改めて石狩市の良さを再認識しました」――こう語るのは、石狩郷土研究会会員の高瀬たみさん。5月26、27日の2日間にわたって石狩浜海浜植物保護センターで開かれた「自然案内人養成講座」(いしかり海辺ファンクラブ主催)に参加した高瀬さんは、参加の動機について「私は市内の弁天歴史公園内にある運上屋管理棟でボランティアガイドをしているのですが、石狩浜についても聞かれることが多いのです。ガイドをしている手前、石狩浜の自然についても知りたいと思い今回の講座で勉強しようと思い参加しました」と話す。
石狩は明治に入る200年以上も前から和人(日本人)が入り、アイヌの人々と鮭や動物の毛皮などを交換する交易拠点であった。一方、石狩海岸は小樽市銭函から石狩市望来まで約25キロの砂浜海岸が続き、砂浜本来の形を残している海岸として貴重視されている。
石狩海岸の特徴として、今回講座の講師となった、NPO法人いしかり海辺ファンクラブ理事の内藤華子さんは、「石狩浜は砂浜から第1砂丘、第2砂丘を形成し、砂丘上の海岸草原や海岸林がまとまって残っている全国的にも非常に珍しい自然海浜です。特に全長17キロ、最大幅500メートルに及ぶ天然のカシワ林は日本でも類例がありません。そして何よりもこの海岸はおよそ300種の海浜植物、昆虫や野鳥など約150種の動物が生息する環境となっています」と説明。全国的に多くの海岸線が護岸工事などで本来の砂浜海岸の形をとどめない中、しかも人口190万人を擁する札幌市という大都市を背後に抱えながらも自然に近い形で石狩浜が残ってきたことはある意味で奇跡的だったといえる。
同講座は、1日目の午前中は石狩浜を取り巻く自然環境や石狩浜の成り立ち、そこに生息する動植物や自然保護の必要性といった石狩浜の「自然概論」を学び、午後は同センターの屋外にある観察園に移動して実際に石狩浜に生息する海浜植物の特徴を学ぶ。2日目は、NPO法人いしかり海辺ファンクラブに所属するボランティア団体のスタッフによる石狩浜をテーマとした自然体験学習のポイントや体験企画の企画作成および実践説明、さらに今回の講座に参加したメンバーが1日目で学習した内容を踏まえて、自らが自然案内企画シートを作成。参加者やスタッフを相手にガイドを実践し、それに対してスタッフがガイドぶりを評価するという濃い内容になっていた。参加者の一人で石狩市在住の森幸二さんは「山登りなどアウトドアが好きで今回関心があって参加したが、とても勉強になりました。実践発表は25分でしたが意外に長かった」と感想を漏らす。
石狩浜海浜植物保護センターは、石狩海岸の環境保全を目的に2000年に建設された。1970年代後半からのモータリゼーションの多様化と共にバギー車やオートバイなどによる砂浜や砂丘を破壊する行為が後を絶たないことから市内の環境保護に関心を持つ有志が集まり、2011年11月にNPO法人いしかり海辺ファンクラブを結成した。以来、石狩市の魅力と貴重性の発信、ファン作り、次世代の育成、自然景観の保護・保全に積極的に取り組んでいる。
内藤さんは「これまで市内の小中学校を訪れ、石狩浜の観察やゴミの問題、さらに自然保護対策などを提示しながら、一緒に考えてきました。何よりも石狩市民が石狩浜の魅力を再認識し、札幌市民など石狩市以外の方々にも知ってもらいたい。これからも自然案内人を増やしていきたいです」と語る。
「自然案内人講座」に参加し、2日間の日程を終了した人は「自然案内人」認定書が手渡され、今後、石狩浜海浜植物保護センターやNPO法人いしかり海辺ファンクラブのイベントなどで活躍することになる。






