OIST第1期生14人が世界トップの研究員目指す

初の修了式、グルース学長「挑戦を続けよう」

 世界トップ水準の科学技術研究を誇る沖縄科学技術大学院大学(OIST)の修了式が2月24日に行われ、第1期生の14人が博士課程を修了した。今後、科学技術の研究分野の研究員などとして世界のトップレベルでの研究活動が期待される。(那覇支局・豊田 剛)

提唱者の尾身幸次氏に名誉博士号

OIST第1期生14人が世界トップの研究員目指す

修了式後、帽子を放り投げ喜ぶ修了生=2月24日、沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 OISTは2009年に施行された沖縄科学技術大学院大学学園法「沖縄を拠点とする国際的に卓越した科学技術に関する教育研究の推進を図り、もって沖縄の振興及び自立的発展並びに世界の科学技術の発展に寄与することを目的とする」に基づいて、予算のほぼ全額を政府からの補助金で賄い、2011年11月に学園が創設され、翌年9月1日に沖縄県本島中部の恩納村に開校した。

 世界の50を超える国と地域から集った教職員・学生が研究に勤しむ国際色豊かな研究大学院であり、教員の6割以上が海外出身者。これまでの6年間、世界40カ国から177人の博士課程学生を受け入れ、昨年度は、450人の応募に対して35人が入学した。物理学、化学、神経科学、海洋科学、環境・生態学、数学・計算科学、分子・細胞・発生生物学の分野で、少人数体制で学際研究を行っている。

 修了式は恩納村のOIST講堂で約300人の来賓や学生が見守る中、厳かに行われた。初年度に入学した14人は、学位記授与式で博士号(学術)を授与され、地元の伝統工芸「読谷山花織」を取り入れたフードを首にかけてもらった。

OIST第1期生14人が世界トップの研究員目指す

修了式で名誉博士号を授与された尾身幸次氏(中央)

 修了生の主な「就職先」は、東京大学、米ハーバード大学、米ジョンズ・ホプキンス大学、米ローレンス・バークレー国立研究所などでの研究職。また、シュプリンガー・ネイチャー社などの学術出版界に進む者もいる。

 入学前に名桜大学(名護市)を含め沖縄の学術研究機関で働いて「研究成果を沖縄で生かしたい」という夢を持っていた高橋大介さんは最先端医療機器開発を専攻し、今回修了した2人の日本人の1人だ。

 ピーター・グルース学長は開式のあいさつで、「人生は実験である。実験の数が多ければ多いほど良いものになる」という米国文豪ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉を引用。今後の人生において臆病にならず、挑戦を続けるよう激励した。

 「もし皆さんが失敗したことがないとしたら、それ自体が皆さんの人生における最大の失敗でしょう。失敗なしでは何をなし得たかも知ることはできません」とノーベル賞受賞者で、米国エネルギー省元長官のスティーブン・チュー博士が祝辞を述べた。チュー博士は、リスクを冒して挑戦することの重要性を強調。「借り受けた地球を大切にしたと子供たちに思ってもらえるようにしてほしい」と締めくくった。

 修了式のサプライズとして、沖縄北方・科学技術担当大臣としてOIST設立に携わった尾身幸次氏にOIST初の名誉博士号が授与された。授賞の理由としてグルース学長は「尾身氏の勇気、無欲さ、人格、先見の明がなければOISTは誕生しなかった。利他的な活動が伴うリーダーシップをたたえる」と述べた。

 尾身氏は、「科学技術が日本に活力を与え、経済成長に不可欠と確信した。沖縄で観光業以外の経済発展のために何ができるか考え、アジア圏における知的クラスターにすると考えた」とOIST設立の経緯を振り返った。

 「何もない恩納村の森に10年以内に卒業生を生み出すことになった」と感慨深げに語った尾身氏は、「OISTの今後の成功は、日本政府の継続的な支援と県民の支援に懸かっている」と断言した。

 OISTの来年度の予算は200億円で前年度比20%増。グルース学長は、2022年までに職員と学生を現在の2倍程度に増やすことを目標としている。