「読む楽しさ、調べる喜び」を児童に 東京都荒川区立赤土小が研究発表
「読む楽しさ、調べる喜び」を味わえる学校図書館利用活動に取り組む、東京都荒川区立赤土小学校は(小島武志校長、1・4年生は2クラス、他各学年3クラス16学級517人)このほど、学校図書館利活用の公開授業・研究発表会を開いた。次期学習指導要領に掲げる「主体的・対話的で深い学び」の実践に向け、小島校長を先頭に教職員が一致団結して取り組んでいる。(太田和宏)
読書意欲を醸成する図書館利活用
赤土小学校は図書館利活用を推進するため「赤土コア」というシステム化された指導法を、全学年、全教科、全クラスの学びの場に適用している。「赤土コア」について研究主任の石川美和教諭、研究推進委員の湊屋幸教諭、中村優太教諭による研究発表が行われた。新宿区教育センター学校図書館アドバイザーは「一昔前は教師個人の力量に、頼っていたが、校長を頂点に組織・体系化した同校の研究は教育現場で見習うべきものがある」という。
同校の教育目標・目指す児童像は読む楽しさを味わい、調べる喜びを味わい、幼保(幼稚園・保育園)・小学校・中学校の連携を築き、地域を挙げて「いつまでも(生涯を通して)本に親しむ子」を育てること。幼保の子供に対して、読み聞かせする場合など、物語の要点、登場人物の心情、声の出し方などの注意点を通して、学習の振り返りができる。中学生との交流では中学生側の振り返りができ、小学生側は新しい学習の視点を学ぶことができる。自己認証感や達成感を児童・生徒が共有することができる。
そのための読書環境という土台を整備するため、タブレットPC、電子黒板の設置、学校図書標準冊数の1・6倍に当たる1万5336冊と全国有数の蔵書、学習センターの役割を持つ「まなびやルーム」、読書センター「なでしこルーム」、情報センター「あかどっこルーム」と小学校としては異例の3図書室、学級・読書活動を推進し、児童が学習に必要な資料を手にできる38台のブックトラックが各学級の前に置かれている。
「本を読んだり、調べ物も好きじゃない」という児童を含めて読書の量、質、種類を増やし、広げるための工夫も学校挙げて取り組んでいる。基本として1、3、5学年は「読む楽しさ」を求め、2、4、6学年は「調べる喜び」を味わうことを指導。昭和女子大学元教授の押上武文氏が「児童を飽きさせない工夫とバランスが良い、学年制の取り組みがある。課題も多々あるが、幼保・小学校・中学校の双方向の学習と成長の場ができる」と評価する。
児童の関心を高め、意欲を掻き立てるための工夫として、PTAから贈られた図書バッグが机に端に掛けられている。中にはバーコードの付いた「読書記録カード」があり、小学校時代の図書館利用・読書の傾向が一目で分かる。活用の仕方を説明した「図書館ノート」が入っている。もちろん、図書館から借りた本も入っている。目標を立て、達成した児童には「赤土読書賞」としてバッジがプレゼントされる。
学びのプロセスとして①見通しを持って主体的に学習が進められるよう「赤土小学校『調べる学習』のすすめかた」や「学習計画表」提示②育てたい資質・能力を明確にする、というポイントをクラスに掲示して児童一人一人が、この時間、何を培っていくのか、何を学べばよいのか、自覚を持って授業に取り組めるように努めている。
「調べる楽しさ」を示したのが4年生の社会科授業だった。「伝とうや文化を生かすまち『江戸の文化を今に伝える浅草のまち』」という授業では、1冊の本に書いてあることをまとめて、終わり、というのではなく、複数の図書を読んで研究したり、タブレットPCを活用したり、中には浅草で外国人に“取材”してきた児童もいた。複数の書物から気になる要点を「情報カード」に書き出し、情報を取捨選択して、発表にまとめている。
帝京大学教授の鎌田和宏氏は「児童の集中力がすごい、自分の調べ物に対しても、一生懸命に調べている。発表するのも一生懸命で、他の児童が発表する時も、何か、自分の発表のプラスになることは無いかと真剣に聞いている。クラス全体がそういった雰囲気だった」と授業効果を評価する。
赤土コアに取り組む姿勢はクラスごとに濃淡があるものの、校長を頂点に学校として取り組む姿勢は一貫しており、一歩一歩前進している。







